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しっかりした高い目標を掲げれば実現への道はやがて拓ける国立天文台 教授 家 正則

すばる望遠鏡の建設

 CCDカメラや観測装置に関するさまざまな開発を行うのと平行して,帰国直後の1984年夏から大型望遠鏡の技術検討会を企画し,隔月開催しました。これは,当時の私の上司だった小平桂一先生を中心に,地上で一番観測条件の良い場所に世界最先端の望遠鏡を建設しようという大胆な構想の検討を始めたからです。すぐに実現する計画ではなさそうなので,あらゆる発想を取り入れた勉強を重ね7年間で50回の技術検討会を続ける中ですばる望遠鏡の計画が次第に固まりました。計画の要は,直径8mの主鏡の製作と制御をどうするかでした。全体予算を抑えるには主鏡の軽量化が不可欠で,直径8mのガラスを厚さ20~の薄いお皿型にして,コンピューターでその鏡の形を制御するという方式を考えましたが,この中で私の学位研究に使った銀河円盤の振動の解析と同じ数学が使えることに気づきました。この方式を能動光学と名づけました。
すばる望遠鏡レーザーガイド補償光学系の原理

すばる望遠鏡レーザーガイド補償光学系の原理

 私はずっと技術検討会の世話人をやりました。いろんな大学の先生やいろんな研究所の先生,メーカーのトップレベルの技術者を招いて,新しい大望遠鏡に使える技術がないかといろいろ聞き,計画をまとめ上げていきました。こうしてまとまった計画は直径8mのすばる望遠鏡をハワイに建設するというというもので,必要な予算規模は400億円との見積もりになりました。額が大きいだけに,予算措置までには年月がかかるだろうと思っていたのですが,1980年代末は日本の経済が右肩上がりで,多くの関係者の努力と後押しが実り,1991年度からの建設予算が付くことになりました。
 付いてしまったという言い方は変なのですが,付いた以上はちゃんとやるしかない(笑)。90年代の10年間は,覚悟を決めて,望遠鏡と観測装置を作るプロジェクトに没頭しました。サイエンスをやる時間は全くなくなりました。
 すばる望遠鏡の建設計画を進めながら,同時に望遠鏡に付ける観測装置であるFOCAS(フォーカス)という撮像分光装置を柏川伸成さんを中心に作りました。遠い微かな銀河を写真撮影し,その性質を解明する分光観測をするための重要な装置です。
 私が直接指揮した装置としては,すばる望遠鏡の視力を10倍に改善する補償光学装置というハイテク装置もあります。これは地球の大気が光をちらちらさせて天体画像をぼけさせるという,天文学者の長年の悩みを解決する最新技術です。光のゆらぎを毎秒1000回の速さで測定して,小型の可変形鏡をリアルタイム駆動してゆらぎを補償することで,回折限界の解像力を達成するという原理です。総額7億円の研究費を頂いて,早野裕さんたちと2011年にすばる望遠鏡に搭載した第2世代の補償光学装置は,ハッブル宇宙望遠鏡の3倍の解像力を実現しています。またこの装置がいつでも使えるようにするためのレーザーガイド星生成装置というものも開発しました。 <次ページへ続く>
家 正則(いえ・まさのり)

家 正則(いえ・まさのり)

1949年札幌市生まれ 1972年東京大学理学部天文学科卒業 1977年東京大学理学系大学院博士課程修了 1977年日本学術振興会奨励研究員 1977年東京大学理学部天文学科助手 1981年東京大学東京天文台助手 1986年東京大学東京天文台助教授 1988年国立天文台助教授 1992?国立天文台教授 この間,日本天文学会副理事長,総合研究大学院大学数物科学研究科長,国際天文連合日本理事,日本学術振興会学術システム研究センター数物系科学主任研究員,国際光工学会シンポジウム組織委員長などを歴任
●分野
銀河物理学,観測天文学
●主な受賞歴等
2013年日本学士院賞 2011年紫綬褒章 2011年東レ科学技術賞 2010年文部科学大臣表彰 2010年研究部門 2008年仁科記念賞 2006年日本光学会 2006年度光設計特別賞 2003年第44回平成15年度科学技術映像祭文部科学大臣賞(科学技術部門) 2002年第13回ハイテクビデオコンクール2002年度最優秀作品賞

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