特別編(上) 講演 光による人類の未来への貢献光産業創成大学院大学/浜松ホトニクス(株) 晝馬輝夫
レーザーと米作り
浜松ホトニクスの前の最高顧問は,故 三輪大作さんでしたが,三輪さんはかつて通産省にいらっしゃって,大変お世話になった。その三輪さんに米をレーザーで作れるようになったという実験をお見せしましたら,酒米を作れと言う。山田錦という酒米です。山田錦というのはお米のなかでは作るのが大変難しいのですが,それで作ったお酒は大変おいしい。それでは山田錦を作ろうということでレーザーを使って作ってみたら,1回目の実験では3ヶ月で米ができました。それで何回か実験を繰り返して作った米をお酒の醸造元に持って行って見てもらい,これなら使えるということになった。それで大吟醸を作ってもらいました。残念なことに,お酒ができる前に三輪さんは亡くなられたのですが,そのお酒で三輪さんを偲ぶ会をやろうということになり,偲ぶ会にその酒を持って行ったのです。以前,レーザーで米を作ると言ったときに,農水省の幹部の方がそれを聞いて,「ワラならいくらでもできるかもしれないが,米はできない」とおっしゃるので,偲ぶ会にご招待したところ,そのお酒をたくさんお飲みになって,帰りに私のところに来て,「あの酒は美味しい,どんどん作って欲しいなあ。私も買うから」とおっしゃる。ですから私は「1升30万円なら作れるが」と言うと,「それならいい」という話になりました(笑)。
しかしながら,いずれ電気が安くなって1kWが25円もしないで,3円50銭でできるようになれば,おそらく普通の値段で酒米もできるようになると思いますが,私の生きているうちになるかどうかは分かりません。
もちろん最初は3円50銭以下では作れない。3~4回かけて3円50銭にしたいと思ったらきっとそれはできると思うのです。大学の先生が「きっとこれはできる」と思ってやってもできないことはありますけれど,われわれは八方手を尽くす。それで理屈などは考えない。理屈をどうしても考えたければ自分の都合のいい理屈を考えるからです(笑)。
それで3円50銭が実現できたら,今度はレーザーでいろいろな植物を作るのです。さらにレーザー核融合を使えばいろいろな物質を作れるのではないかとも思っています。日本では産業用の原材料が少ないと言っていますが,それならば自分で作ればいい。それと同時に世界にないような産業用の原材料ができる可能性は十分にある。電気は安くなって,植物や食べ物はいっぱいできて,挙げ句の果てには産業用の原材料も自由自在にできるということになる。