【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

特別編(上) 講演 光による人類の未来への貢献光産業創成大学院大学/浜松ホトニクス(株) 晝馬輝夫

死の谷

 では,「どうやっていけばいいのか」というと,それはすでに申し上げましたけれども,第一番に「人類はまだ知らないことできないことが山ほどあるんだ」ということを信じていただきたい。さきほどのキリスト教の神様を信じるよりもこちらを信じる方が楽だろうと私は思います(笑)。その結果,「技術が発生し,産業が勃興する」ということですから,要するに誰も知らないことを見つけて,「これが正しい方向だ」という方向へ信念をもって進み,その応用を見つける。
 応用とは世の中における使い道のことですから,大学の先生のように,「何か分からないけれども,このことを研究するのが楽しい」というようなことだけでやっていては絶対にダメで,これでは新しい産業は起きてきません。
 そこのところが,「デス・バレー」「死の谷」と言われているところです。研究していて実現のメドは立ったが,相方の応用分野が見つからない。そのために“のたれ死に”してしまうような研究はいっぱいあります。これは日本だけじゃなくて,カリフォルニアのシリコンバレーでも同じです。自分で数えたわけではないですが,シリコンバレーでは年に7000社ぐらい新しい企業ができますが,2年目にはそのうちの一桁の企業しか残っていないというのが現実なのです。そのような企業に出資をする出資者は,ハナから儲かるとは思ってなくて,去年失敗した人が性懲りもなく今年もまた新しい会社を起こすというと,「じゃあ少しは付き合うか」ということでお金を出す。
 そのうちの百に1つが当たると,その百倍,千倍というお金になって戻ってくる。アメリカでは起業に対してそういう博打的な環境があります。ですから,シリコンバレーで会社を起こしてしくじっても,皆さんから白い目で見られて,「こないだしくじった奴じゃないか」などと言われることはありません。むしろ「新しいことにチャレンジする精神の持ち主である」と認められる。

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