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いかに執着できるかに尽きる立命館大学 教授 小野 雄三

産みの親は育ての親

小野:そのころが自分が一番輝いていた時代ではなかったかなと今では思います。ホログラムスキャナーに関して何本か論文を書き,応用物理学会から光学論文賞という賞をいただきました。また製品実用化に関連して,新技術開発財団から市村賞という賞もいただいています。さらに,東京工業大学の辻内順平先生のご指導で学位もいただき,一番頑張っていたころだと思います。

聞き手:辻内先生にはどのような経緯でご指導いただくようになったのですか?

小野:実は東工大にいたにもかかわらず,大学のときに辻内先生を存じ上げていなかったのです。後から考えてみれば,応用物理学科から卒業研究で辻内先生のところへ行けたと思うのですが,当時はまったくそういう考えがありませんでした。1980年のメキシコの学会でホログラムスキャナーの研究成果を出した時に辻内先生とご一緒させていただき,そこでお世話になったのが初めてでした。その後,学位に関していろいろと面倒を見ていただいて,それ以後もずっとお世話になっています。わたしが関連したISO関係のお仕事も辻内先生がやっていらっしゃいましたね。

聞き手:学位を取られたのは,やはりホログラムスキャナーに関するご研究ですか?

小野:はい。「ホログラフィーを用いたレーザー光走査」という研究テーマでいただきました。学位を取った後,この先どうしようかと考えていたところ,光ディスクの開発が非常に盛んになっていたので,光ピックアップや光ヘッドにホログラムを使おうといろいろ考えました。しかし,ホログラムというのは回折素子なので,波長が変わると曲がっていく方向が変わってしまうのです。回折光学素子などではホログラムでレンズが作れますが,波長が変わると焦点位置が変わってしまいます。要するに,フォーカルパワーが変わってしまうということです。光ディスクに使われている半導体レーザーは温度や注入電流で波長が変わるから,単純にホログラムはレンズとして使えないのです。
 どうやってそれらを克服するかですが,一つはレンズの作用を持たせないこと,二つ目は,回折の時の角度が変わっても問題ないような使い方をすることです。回折された光は光検出器で受けます。光ディスクの場合には光検出器に十文字に分けた分割線というものがあり,ホログラムから来た光が波長が変わった時に位置が変わっても分割線に沿って動くような構造にしました。そうすると,上と下の光検出器に入る光量は変わらないので,ちゃんと検出ができるようになります。そういう構造を考えてCD-ROM用のピックアップを作ったところ,当時のNECホームエレクトロニクスという子会社で製品化までこぎ着けることができました。
 実際には,開発や事業移管の際に思ってもいないような問題がいろいろ出てきて,それらを潰すのに大変苦労しました。中研と事業部が会合した時に,ある役員の方が「生みの親は育ての親であってほしい」ということをおっしゃり,わたしも「なるほど」と思い,徹底して事業部移管やその後のマーケティングなどに付き合いました。営業部隊に付いてアメリカまで売りに行ったこともあります。

聞き手:研究所にご所属されながら営業部隊に付いていくというのはなかなかできないことですね。

小野:でも,結果としてそれが非常に良かったのです。アメリカ出張のおかげでパソコンメーカーの技術者などとチャンネルができたのです。その後しばらくして,DVDのコピープロテクションやコピーコントロールについて議論するコピープロテクションワーキンググループがアメリカででき,何の弾みかそこにわたしも行くことになり,来ていた人たちが売り込みに行ったときに会った人間ばかりだったので,非常にやりやすかった覚えがあります。
小野 雄三(おの・ゆうぞう)

小野 雄三(おの・ゆうぞう)

1970年,東京工業大学 理学部応用物理学科卒業。同年,日本電気?に入社して中央研究所に配属。光磁気メモリー,ホログラフィックメモリー,高速レーザープリンター,ホログラフィックレーザー・スキャナー,POSスキャナー,CD-ROM用および光磁気用ホログラムヘッドなどの光情報機器,回折光学,光記録等の研究開発に従事。1999年,立命館大学理工学部教授に転出。ホログラフィックリソグラフィーによる3次元フォトニック結晶の形成と特性解析の研究に注力。現在に至る。工学博士(1985年 東京工業大学)。応用物理学会光学論文賞,新技術開発財団市村賞,科学技術庁長官賞(研究功績者表彰),経済産業省国際標準化貢献者表彰など受賞。応用物理学会フェロー,ISO TC 172/SC 9/WG 7 コンビーナー。

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