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第6回 特別企画 山本和彦・輿水大和『エール的対談』

輿水
 ありがとうございます。次は二番目の話題です。山本先生は日頃「学会は参加者の帰る時の顔を見た時に初めて成功したかどうかが分かる」とおっしゃっています。
 学術界には中央集権的な面もあるといえますが,そこに地方分散的な活動のスキームを作ると面白くなるんじゃないかと,そう山本先生はお考えかと私は想像しています。
 例えば2017年にはDIAを島根で開催しました。地元で古くから盛んな,たたら製鉄の見学会や講演会の開催など,刺激的で活きた学びの場になりました。
 学術会議は単に参加者数が増えればいいわけではない。この点で山本先生のお考えに私も啓発いただいていますが,実はみなさんも薄々感じていませんか。この件,あらためてお話しいただけますか。

山本
 学会はプロデューサーと実行部隊の双方がマッチングして,はじめて成功すると思います。プロデューサーの仕事は,学会をどのように実現するかを考えるため,学会が始まった瞬間に仕事は終わります。一方で実行部隊は狭い意味では学会が終わった時,ようやく仕事が終わりです。
 プロデューサーの立場では,どうしてもいいことばかりを並べたくなりがちです。すばらしい招待講演者に来ていただき,おもしろいことをしてくれる人を大勢集めるなど人を集めることにエネルギーが行きます。私は自分が対応できる範囲で,適正な参加者数があると考えています。それで無理に人数を集めないようにと言っていました。学会の良しあしは必ずしも参加者の数ではないからです。

輿水
 山本先生の具体的なお話で,イメージが膨らみました。
 今のお話の中で興味深いのは,学会のプロデューサーと実行部隊のお話ですが,多くの場合プロデューサーというのは学会運営組織内であまり意識されていない気がしていますが,いかがですか。

山本
 私は,本当はできればその両者,実行部隊とプロデューサーは乖離しないほうがいいと私たちの身近なところで思います。

輿水
 とはいえ,SSIIもViEWもどこかでそのような乖離が始まっているように見えます。もしかしたら,以前からあったのかもしれませんが。


写真3 ViEWでの一コマ

山本
 学会も財政状態を考慮してできるだけ多くの参加者を集めようと考えます。この時来るときの顔を想像しがちです。大事なのは多くの参加者に満足していただけるおもてなしが確保できるかです。多くのご来場者のためにとか,会費収入アップなどといろいろ言うものの,結局は参加者が学会から帰るときの顔を見て運営する,ということを学会でどう実現したらいいのかということだからです。
 その学会の特徴や,集まる人が何を期待しているかなどもありますが, 参加者の思いや思考,趣味,目的などと学会のやろうとしていることが響き合い,次回も周りに声をかけて参加しようとする。このようにして,学会のすそ野が広げられる,自分たちの思いが伝わっているかの指標になるのでないでしょうか。

<次ページへ続く>

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