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第3回 「物体指紋」で画像技術界をバズらせた石山塁博士―モノのタグなし認証技術―

3.「物体指紋」技術のブースター力,展開力,学術力


 物体指紋の技術開発は,典型的かつ屈指のPoC(Proof of Concept)的トライである。コンセプトの新規性パワーが大きければ大きいほど,本物の力を引き出すための証拠固めのブースター力と持続力・サステナビリティ力を蓄えなければならないと想像する。そして,着実にその蓄積が積み重ねられてきている気がする。
 それらは,一つは社会実装のトライの記録,もう一つは学術的認証の記録をじっくり省察したら見えてくる。

(1)成功事例の記録
公開されている成功事例は次のとおりである。

・2011/3/7 メロン千個の個体認証実験に成功,プレスリリース NHK ニュース7 他放映 論文発表(VISAPP2012)

・2014/12/3 産業用ミシンの個体認証 実証実験 論文発表(ViEW2014,精密工学会誌 vol.82(3))
・2015/9/24 抱っこひも「エルゴベビー」の偽造品対策に採用~プレスリリース 実用化
・2017/5/9  ボルト1 万本の個体識別実験に成功 大量撮影の自動化装置を開発 論文発表(MVA2017)

・2017/7/19 ペン書き1mmの点を識別タグとして活用する技術「マイドット」を開発 プレスリリース TV東京WBSトレンドたまご放映 論文発表(IEEE ICIT2016, ACM Multimedia2017)

・2018/6/12  半導体部品の個体識別実験に成功 論文発表(ACM MMSys2018)

・2019/2/12  錠剤1 粒1 粒を個体識別・真贋判定 実証実験に成功 論文発表 (IEEE Int. Conf. Industrial Technologies( ICIT2019))

・2019/7/24  多種物体混在に対応した手術器具の個品管理 実証実験に成功 論文発表 (日本医用画像工学会大会(JAMIT2019))


(2)「 物体指紋」研究が JSPE 技術賞,奇縁とサステナビリティ力
 2020年5月末,石山さんから精密工学会技術賞への推薦依頼のお手紙をいただいた。もちろんお受けした。そして程なくして8月末,晴れて内定が決まったとの 朗報をいただいたのだった。
 このエピソードは,ViEW2011からの細く長い機縁に乾杯といったところかと思う。しかし,焦点はそこではなく,「物体指紋認証」という生粋の画像AI技術が, 精密工学という物質科学技術のメッカで認証された点に大きな意味があると思う。その意味は,その賞の規定から炙り出される。
 やや分析的過ぎるが,「物体指紋」技術は第2条の「精密工学の領域」である,つまり,精密工学のscopeを広げた価値がある,とされたのである。「物体指紋」技術は第3条の「精密機器の開発」中枢に住み「生産加工技術に関する研究または開発」に相応しい,とされたのである。これらは,画期的なことである。

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