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第3回 「物体指紋」で画像技術界をバズらせた石山塁博士―モノのタグなし認証技術―

1.はじめに―「物体指紋」というメッセージ-


 さて,人や物の同定,認証という概念とその技術は,古今東西,ヒト世界と社会の営みにとって基本中の基本である。人認証では身分証明書や印鑑から指紋(fingerprint)や顔のようなbiometricsにシフトしたのに似て,物に貼った伝票やタグに代わる物のbiometricsとして「物体指紋」の可能性を石山さんが世に初めて問うた。
 石山さんへは,この「物体指紋」という着想と研究推進に深く沈殿している,その「オリジナル力」と「ブースター力」そして「サステナブル力」に向けたいと考えている。
 「物体指紋」初期のインパクトの意味は,その受賞歴に内在していて顕著である。世間が,特に産業社会が一気にそのオリジナリティに驚いた。そして,ビックリさ せた画像技術界をバズらせたパワーが,良くも悪くも息が長いところが気になる。10年以上バズり続けることは,学術界で稀有である。

<オリジナルオリジナル力とブースター力を証明する受賞歴>
・2012年3月 映像情報メディア学会年間優秀研究発表賞/アグリバイオメトリクスによる農産物の個体識別
・2015年11月 ET/IoT Technology Award2015優秀賞/物体指紋認証技術

・2016年7月 先端技術大賞経済産業大臣賞/「物体指紋」認証技術の研究開発およびグローバルな真贋判定ソリューションの実現

・2018年9月 日本自動認識システム協会(JAISA)自動認識システム大賞(特別賞)受賞/ブランド品と鑑定書の紐付けシステム

・2020年9月 精密工学会技術賞/人工物メトリクスに基づく多種多様な製造物の個体管理の実現に向けた物体指紋の撮影方法とその照合方式の確立


 そのサニーサイドは,物体指紋の技術ポテンシャルが薄っぺらでないことの証左であると思っている。そして,ダークサイドは,あえて言えば,実装に伴う技術課題が安易でない気配にある。例えば,物体指紋は物体のどこ(ランドマーク)に定めるか,マニューシャ特徴抽出技術を構築するか回避するか,画像マッチング法の工夫がなくてはならない。そして,多種多様な現場にて個別に実装実証することが何はさておき喫緊であろう。

<次ページへ続く>

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