【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

営業で肝に銘じているのは, 絶対に嘘はつかない,ごまかさないということ株式会社マイクロ・テクニカ 岩田 節子

高速文字認識に特化した画像検査装置に強み

聞き手:マイクロ・テクニカは「画像検査ソリューション」のリーディングカンパニーとHPでうたっていますが,岩田さんのお仕事の内容を教えていただけますでしょうか。

岩田:マイクロ・テクニカは1981年に設立され,今年で41年目を迎えました。もともとは,ハードウェアの設計者が集まって創った会社で,お客様から依頼を受けてボードや装置などのハードウェアの受託開発を行っていました。その中で,当時,あるメーカーから工場の製造工程を自動化し,流れていく製品をカメラでとらえてロボットに指示を出せるようにしたい。そのために,カメラで画像を撮る機能と,ロボットを制御する機能を一緒にしたボードをつくれないかという話をいただきました。そこで実際に製品化し,結果的にうまく軌道に乗りリピートもいただくようになりました。
 以降,カメラがつながる画像入力ボードや,ソフトウェアを動かすためのCPUボードなどをつくり,これらを組み合わせることで検査装置がつくれるようなものを開発し,販売するようになりました。また,その中でお客様からこういう検査をしたいという要望を受けた場合には,自分たちで検査装置として仕上げ納めることも始めました。
 画像検査といってもいろいろなものがありますが,文字認識を高速にできるという部分に特化して仕事をさせていただいたのがうまくいきました。現在では,印刷関係の文字認識やバーコードの読み取り検査では高い評価をいただいていますし,それらを小型化した検査装置は日本の製薬メーカーのほとんどの工場で使っていただいています。
 私が主に担当してきたのは,画像ボードの営業です。お客様が自社で検査装置を作る場合,マイクロ・テクニカでつくった画像入力ボードを使っています。であれば,画像入力ボードだけ買いたいお客さんがいるのではないかというのがそもそものきっかけです。当時,NECがPC98というパソコンを売り出して,NECのパソコンに画像ボードを入れられるように開発しました。当時のアナログのカメラでは,ソニーや東京電子工業(現:東芝テリー)なども産業向けにカメラを出し始めていて,カメラをつなぐための画像ボードのニーズがあったのです。そこで,ボード事業を立ち上げました。ボード販売は代理店や商社との付き合いもあり,専属の営業を置いたほうがいいので,私がボードの営業を担当することになりました。
 ボードの販売を通じて,検査装置業界,印刷業界,製薬業界をはじめ,それ以外の業界の画像検査や画像処理の要望などの情報もいろいろ入ってくるようになり,様々なニーズを捉えた新しい製品や技術を導入しようと,5年間開発部に在籍しました。そこで,コンタクト・イメージセンサーというカメラモジュールを搭載した検査装置や,画像処理もカメラの中で行うようなスマートカメラを開発しました。今は,また営業に戻ってそれらを自分で売っています。

教育学部の教員志望から技術系の会社へ就職

聞き手:営業や開発も経験されたということですが,大学でも画像処理を専門にされていたのでしょうか。

岩田:よく聞かれるのですが違うのです。私はもともと子どもの頃から教員になりたくて,大学は教育学部に行きました。教育実習もして教員を目指し,教員試験も受けました。しかし,私が大学を卒業する頃は,現役の教員は余っていました。団塊世代の子どもである団塊ジュニアは増えつつありましたが,将来的には少子化が見えていましたので,教員採用は氷河期時代と言われていました。そのため,なかなか受からず,教員はあきらめてどこかに就職をしようかと思ったときに,縁があってマイクロ・テクニカに拾ってもらうことになったのです。
 私は教育学部で,しかも専攻が社会科なので,まさに文系です。ですから,就職活動では事務職を希望して何十社も回りました。最終選考の3人のうちに残ったところがあったのですが,そこは別の人が採用されることになりました。たまたまそこの社長がマイクロ・テクニカの株主だったのです。当時マイクロ・テクニカも人を募集していたことから紹介され,本社が池袋で通勤が近いのもあり,入社しました。
 私は基本的に人と話すのは好きだったので営業が苦になりませんでした。また,もともと文系でしたから,技術はわかっていないことは常に意識していましたので,お客様から言われたことでわからないことがあれば必ずその場で聞き直し,確認することを心がけていました。そうすると,当然お客様のほうが詳しいですから教えていただけます。それをまた会社に持ち帰って社内の技術の人間に話し,もう一度聞きます。そうすると,2回教えてもらうことになるので,それで覚えられます。わからないことはまず聞いてみるのは,とても重要だと思います。
 開発に関しては,CPUの性能が飛躍的に高くなっていきましたから,ソフトウェアをそんなに変えなくても高速化を追求でき,高速文字認識や高速バーコード読み取りなどの製品化ができていました。しかし,GPUを使った高速の画像検査装置や,ARMを使った小型で低価格な検査装置が出てくるようになりました。マイクロ・テクニカでも導入をしていかなかれば先がなくなるので,CMOSのデバイスを使ったカメラとセットで検査ができるようなものを開発していくことになりました。私の役割は,開発部の思いを聞き,チームをまとめ新しい開発を進めることです。私は設計もプログラミングもできませんから,何かをやろうとしたら人に頼み,一緒にやるしかありません。それまではだれか1人が設計を担当し,その人にしかわからないという装置もありました。そういうところから次第にチームで開発を行っていくことで,会社に設計資産も引き継いでいけるようになりました。

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岩田 節子

岩田 節子(いわた・せつこ)

1987年 埼玉大学卒業
1989年 (株)マイクロテクニカ入社
2006年 JIIA(日本インダストリアルイメージング協会)理事
現在   JIIA副代表理事
株式会社マイクロテクニカ https://www.microtechnica.co.jp/
JIIA            http://jiia.org/

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