【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

営業で肝に銘じているのは, 絶対に嘘はつかない,ごまかさないということ株式会社マイクロ・テクニカ 岩田 節子

既存技術と新規開発のバランスをどう取るか

聞き手:お客様の要望を聞いたり,チームをまとめたりして仕事をされるなかで,苦労されたエピソードなどがありましたらお話しいただけますでしょうか。また,その困難をどのようにして乗り越えられたのでしょうか。

岩田:私も営業ですから,当然売上をあげたいし,利益も上げたいです。しかし,開発部のメンバーもそんなに多くいるわけではありません。例えば,売上,利益を上げるためには,あまりハードルの高くない仕事,いわゆる既存の技術でできるものを受注する方法もあります。会社としてはそれでいいのですが,開発部としては新しい開発要素があるものをやらせてあげたいという心情もあります。そこのバランスは難しいのです。
 ある程度の人数がいれば,既存の技術ででき,お客様ありきの受託開発だけをするチームと,マイクロ・テクニカの技術の要素をもちながら新しい製品をつくっていくチームとに分けられるのですが,そうもいきません。そのバランスをどう取るかは,今でも苦労しています。
 また,新しい技術の場合には納期にも苦労します。あるお客様で,新しいインターフェイスの導入を提案し,半年から8か月くらいでできますと言っていたのが,結局1年経っても終わらないということがありました。お客様からは開発期間を含めて開発費も一部お支払いいただいていますし,お客様はその製品ありきでシステムを組み上げることが決まっていました。最後は開発部のメンバーに現場に出向いてもらい,その場で調整し,それでもダメなので持ち帰って調整したこともありました。そのときは,開発のリーダーでありながら,営業の窓口もやっていたので大変でした。結局,手を尽くし,何とか完成することができました。
 私が営業で常に肝に銘じているのが,絶対に嘘はつかないということです。嘘をついたり,ごまかしたりしても後でわかってしまいますし,最終的にそのツケは自分に返ってきます。技術的な見解はこうで,ここまで時間がかかりますときちんとお話して,お客様に納得いただくことが大事です。お客様に気をつかって,できそうもない無理な約束をすることのほうが迷惑をおかけすることになります。
 日本の画像処理業界のマーケットはそれほど広くはないですから,メーカー同士も知り合いだったりします。良い噂よりも悪い噂のほうがすぐに広まりますので,それには気をつけて仕事をしないといけません。お客様以外でも他で信用をなくすことにつながるかもしれませんし,そこは営業としてかなり気をつけています。

JIIAを立ち上げ,世界標準化や情報の提供を進める

聞き手:岩田さんはJIIA(日本インダストリアルイメージング協会)で運営委員会の委員長もされていますが,岩田さんの役割と活動内容について教えていただけますでしょうか。

岩田:JIIAは今,一般社団法人になっていますが,きっかけは2005年頃,アナログのシステムをデジタルに換えたいというお客様から,Camera LinkとIEEE1394とどちらでデジタル化したほうがいいかという相談を受けたことにあります。マイクロ・テクニカはCamera Linkのボードをすでにつくっていたので,Camera Linkをお薦めしました。しかし,Camera Linkの場合,カメラとボードをつなぐのにケーブルが2本必要でした。アナログはすでに1本になっていましたので,なんとか1本にするように考えますと答えて持ち帰りました。そのお客様のカメラがCISでしたので,一緒にやれないか相談したところ快諾いただいたので,一緒に開発を行い,お客様に納品しました。そのときに,これは世界規格にしたほうがCamera Linkももっと広がるので,CISを中心にカメラメーカーやボードメーカー,ケーブルメーカーを集め,ワーキンググループをつくりました。その中で,アメリカのAIA,ヨーロッパのEMVAのような協会をつくろうという話になり,2006年にJIIAを立ち上げたのです。私はその立ち上げの際に理事に就任し,今は副代表理事になっています。
 JIIAからAIAやEMVAにもこの規格を認めて欲しいと提言し,Camera Linkの規格としてPoCLが認められました。日本の検査装置やマシンビジョンは,日本のお客様が作り上げていったところがあり,日本から規格化を発信できたことに大きな意義がありました。今は,欧米と中国を入れた5団体で,カメラだけでなく照明のインターフェイスや,レンズのマウントなどの規格化,標準化を進めています。
 JIIAを立ち上げた頃は,PoCLワーキンググループのメンバーが中心で,会員は30数社でした。アメリカは250社くらい所属していますから,まずは国内のメンバーを増やすのが私の役割でした。私は業界で長く営業をしていて,画像機器メーカーをはじめ知っているお客様が多かったので,展示会などの場で声をかけさせてもらってお誘いしたり,画像の専門誌に毎月コラムのページを執筆させてもらい,活動やイベントなどを紹介したりしていました。
 今では100社を超え,画像処理のメーカーだけでなく,SIerやソフトウェア会社,FPGAを販売している会社など,業界も広がっています。その中で求められているのが,会員同士のつながりや,海外も含めた画像業界のマーケットの情報です。そこで,外にも情報を広めるけれども,JIIAで得られた情報を会員にフィードバックしていくための運営委員会をつくり,私が委員長を務めています。会員の勉強会などを企画・実施して,さらに強化していきたいと考えています。

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岩田 節子

岩田 節子(いわた・せつこ)

1987年 埼玉大学卒業
1989年 (株)マイクロテクニカ入社
2006年 JIIA(日本インダストリアルイメージング協会)理事
現在   JIIA副代表理事
株式会社マイクロテクニカ https://www.microtechnica.co.jp/
JIIA            http://jiia.org/

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