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問題点の解決を図る道は,なぜうまくいかないのかをじっくり調べることにある香川大学 石井 明

機械屋になるのが 当然のように思っていた

聞き手:工学分野に興味をもたれたきっかけについて教えていただけますでしょうか。

石井:小さい頃から父が営む小さな自動車修理の町工場で,父がエンジンを分解するのをじっと見るのが好きでした。小学生になると,少しずつ修理を手伝うようになり,調子の悪かったエンジンが快調に回り,洗車でピカピカになるのが嬉しかったように思います。
だから,自然に機械屋になるつもりでいました。電気を選ぶという発想はなかったです。
自動車イコール機械という感じでした。高校は5歳上の兄の後を追うように高専の機械科に進みましたが母からは大学に行くように言われました。昇格は大卒のほうが有利だったのです。でも,勉強は好きではなかったので,編入試験を受けるのに,一生懸命勉強をしなければいけませんでした。7月初めの東京農工大学と9月の頭にあった山梨大学の編入試験は見事に落ちました。そして9月の終わりに電気通信大学の編入試験で救ってもらいました。編入試験を実施する大学も,まだ多くなかった時代でした。
 卒業研究では,有限要素法による構造解析という数値計算をする横内康人先生の研究室に入りました。それまでは自動車のエンジンをいじったりするのが好きでしたが,将来は計算機の時代だと思い,構造解析の研究室に入りました。
 構造解析というのは大型計算機を使います。あの頃はプログラムをコーディング用紙に書くのですが,書くと同時にそれをパンチカードに打って,穿孔機で穴を開けていきます。打ち間違えると,もう1回全部打ち直すことになるので,とにかくミスをしないように打たなければいけないということを学びました。そして,その時にちょうどPDP-11という,その当時有名なアメリカのDECという計算機会社の計算機が入りましたが,これが使えるのは,先輩が居なくなった夜中でした。そのため,夜中に計算機を使い始めて朝方まで計算し,それから家に帰って少し寝てまた出てくる生活でしたが,このときはとにかく面白かったですね。しかし,卒業研究を終えてわかったことは,「自分はほとんど理解できていない」ことでした。
 大学院は,本当に良く勉強しました。横内先生にとっては最初の修士の学生だったので,マンツーマンの厳しい指導で良く鍛えていただきました。
その時にやっていた構造解析は,原子炉の中にある圧力容器の熱解析だったので,大学院を出る時には,将来は日立に入ろうかと思いました。大学院2年の8月に日立の機械研究所に行ったのですが,最寄りの駅は神立という当時は非常にローカルな駅で,ほとんど人がいなくて,すごいカルチャーショックを受けて「こんなに寂しいところでは生活ができない」と思ってすぐにあきらめました。その次に本田技研を考えて,説明会だけ申し込みました。ちょうどその日に,佐々木茂美教授とその時助手だった越智保雄先生に呼ばれて,「うちの研究室に来ないか」と言われました。
 その時は,研究室の4年生が修士の入学試験を終えたところで,昼間から一緒にお酒を飲んで酔っぱらって顔は真赤になっていたので,すごくうれしいけれども,「本当の話だったのかな」なんて思いながら家に帰った覚えがあります。
 その研究室では金属疲労を研究していたので,実験屋さんです。今度こそ本当に機械屋さんになって,1日に数本から数十本程度しか製作することができない様々な形状の疲労試験片を,毎年,数百本程度作成するために,機械工場で機械加工をしていました。夏にまとめて作るのですが, 機械工場には冷房は無くぼーっとするような暑さの中での作業となり,まさに職工さんのような感じでした。
 ものづくりとか機械加工とかは好きだったし,また,研究室に入ってすぐに,越智先生から新たに油圧サーボ引張圧縮疲労試験機を製作するよう指示されました。設計も機械加工も好きでしたので,図面を引いて,大きいものは機械工場の技官の方にお願いして製作しました。試験機の制御は,当時出たてのPC8001を使って,機械語でプログラムを組み,疲労試験の自動化を図りました。
プログラムでのアクチェータの制御は初めてで大変でしたが,うまく動いたときには本当に嬉しかったです。新しいことへのチャレンジにはとても寛容な研究室でした。

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石井 明

石井 明

●石井 明(いしい あきら)先生 ご経歴
1978年 電気通信大学電気通信学部機械工学科卒業 1980年 電気通信大学大学院電気通信学研究科機械工学専攻修了 1980年 電気通信大学助手 1995年 電気通信大学講師 1996年 電気通信大学助教授 1998年 香川大学助教授 2002年 香川大学教授
●研究分野 
工業製品の視覚検査の自動化 子どもの健康な視力の維持 成功する目視検査
●主な活動・受賞歴等
精密工学会, 日本非破壊検査協会, 日本機械学会, 日本材料学会, 日本材料試験技術協会

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