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いろいろな経験を積むためにも学生にはできるだけ海外で洗礼を受けさせる早稲田大学 教授 中島 啓幾

失敗を繰り返しながら,学生は成長していく

中島:海外に出て初めて,日本の良さや問題点が分かります。自分で自分を見つめ直す,あるいは,自分たちがやってきていることを再確認するという意味で,一度日本を離れてみて,いろいろな経験を積む必要があると思っています。ですから学生を,国際会議に投稿させて,できれば海外で洗礼を受けさせるようにしむけているつもりです。
 自分が国際会議に出たときの苦い経験がありますから,それ以来,「発表が終わって,そこでほっとしてしまったらアウトで,そこからの質疑応答が本番だ」と,学生たちには言っています。でも,失敗を繰り返しながら,学生は成長していくので,できるだけ早い時期に,国内の学会にまずデビューさせて,それから,できれば国際会議に論文を投稿させるというふうに進めています。ですから,私はリハーサルに関しては,結構厳しいというか,ダメ出しをするほうです。また,自分が発表者や連名者ではなくても,あるいは,ほかのグループのリハーサルにも必ず立ち会えとよく言っています。
 まず論文投稿をしてその会議に通るかどうかで,一つの難関がありますが,通った後は,どういうストーリーで,何をどういうふうにアピールするか。そして,問題はそこだけではなく,実際に想定質問をもちろん考えますけれども,こちらの当事者が考えていなかったようなことを質問されることにどう対応するかです。でも,そこで何を感じるかが,その人がそれから先に進んでいく,あるいは,プロジェクトならプロジェクト自体がどこまで伸びるかの分かれ道だと思っています。だからこそ,そういう発表の場を文化として続けていくことが重要なことだと思います。そういうことが続けられなくなると,そのコミュニティーは崩壊してしまうし,技術やサイエンスも,そこでピリオドが打たれてしまうのではないかなと思うのです。伊賀先生たちと一緒に手作りで続けてきている微小光学国際会議(MOC)は,そうした機会をこの分野で繰り返し提供させていただいていることを誇りにしています。 <次ページへ続く>
中島 啓幾(なかじま・ひろちか)

中島 啓幾(なかじま・ひろちか)

1948年 東京都生まれ 1966年 麻布高校卒 1970年 早稲田大学理工学部応用物理学科卒 1972年 早稲田大学大学院理工学研究科修了 1972年~1996年 (株)富士通研究所 1984年~1996年 早稲田大学 非常勤講師 1996年 早稲田大学 教授(現在に至る) 1998年 ボストン大学 客員教授 2001年~2014年 応用物理学会日本光学会微小光学研究グループ 実行委員長 2002年~2014年 日本女子大学 非常勤講師 2003年~2005年 科学技術振興機構(JST)研究開発センタ出向 シニアフェロー 2011年~2013年 応用物理学会 理事(総務担当) 2012年 応用物理学会 春季学術講演会 現地実行委員長
●研究分野
酸化物単結晶を用いた微小光学,光導波路デバイス,光集積回路と応用
●主な活動・受賞歴等
第9回光産業技術振興協会桜井賞受賞(1993年)
第2回応用物理学会フェロー表彰(2007年)
応用物理学会微小光学研究会運営委員長(2015年~)

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