うまくいかない研究・開発もそこから学べるため失敗ではないアリゾナ大学 光科学部 眼科光学科 教授 John E. Greivenkamp
研究・開発での問題発覚は学ぶためのプロセス
聞き手:これまで研究および開発活動を通じて,ご自身が求められている成果が出ないなどの理由で苦悩されたご経験がありましたら,お聞かせください。また,こうした苦難をどのように乗り越えてこられたか,その秘訣・コツがありましたらご教示ください。Greivenkamp:私は,これまでいろいろな研究・開発プロジェクトに携わってきましたが,求める成果を得たことよりも成果が得られず失敗したことの方が多いでしょう。しかし,当初考えていた成果が得られない場合でも,それを失敗とはとらえていません。なぜなら,うまくいかなかった研究・開発からも,確実に学ぶことがあるからです。物事がうまくいかないときほど,うまくいかなかった原因を追究しようと強く思うからこそ,そこから学べることがあります。だからこそ,うまくいかなかった研究・開発は失敗ではないと考えるのです。
私は光学技術に携わってきているので,例えば光学技術に関するものできちんと作動していなければ,その原因が原理レベルで発生したトラブルなのか,もしくは何らかの技術的制約によって作動しないだけなのか,などいろいろな視点から原因を検討し,究明することができるでしょう。その原因がもし原理レベルであれば,次回からはそのようなアプローチはしませんし,技術に起因するトラブルであれば,まずは冷静に落ち着いて考えてから,しばらくは着手せずにその技術が成熟するのを待つ,あるいは私自身の理解がさらに深まるのを待つなどして解決策を見出し,その上で再開するようにしています。技術関係などで重大な問題が発覚したときは,確かに気持ちが落ち込みますが,それは新たに学ぶための大事なプロセスと考え直し,前向きに対処していくことがとても大事なことと考えます。 <次ページへ続く>
John E. Greivenkamp(ジョン・E・グリービンキャンプ)
1953年米国オハイオ州シンシナティ生まれ。1976年トマス・モア大学文学士号修了。1979年アリゾナ大学修士課程修了。1980年アリゾナ大学オプティカルサイエンスセンター(現カレッジオブオプティカルサイエンス)博士課程修了。1980年イーストマン・コダック社研究科学者。1982年イーストマン・コダック社シニア研究科学者。1987年イーストマン・コダック社,コダック・リサーチ・ラボラトリーズ助手。1992年アリゾナ大学オプティカルサイエンスセンター,および眼科光学准教授就任。1997年アリゾナ大学オプティカルサイエンスセンター(現カレッジオブオプティカルサイエンス),および眼科光学教授就任。●専門のご研究内容:光学干渉測定法,光学試験,光学加工,眼科光学,光学測定システム,光学システム設計,電子撮影システム工学などを研究
●1999?2000年SPIE(The International Society for Optical Engineering and of the Optical Society of America;国際光工学会)実行委員会メンバー。2001?2003年国際光学委員会の米国諮問委員会メンバー。2002年OSA(The Optical Society;)科学技術評議会議長。2002?2003年SPIE教育委員会委員長。1994年APOMA (American Precision Optics Manufacturers Association;米国精密工学会)メンバー。1995年OSAフェロー。1996年SPIEフェロー
●2007年著書「SPIEフィールドガイド幾何光学」,2008年編集「SPIEフィールドガイド 大気光学」,2010年編集「SPIEフィールドガイド 視覚と眼の光学」(すべてオプトロニクス社より発刊)