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企業現場で培った光学知識・技術を大学教育に活用高島 譲

米国流「傍目八目」の発想が難局を打開

聞き手:これまで研究・開発プロセスにおいて,成果が現れずに苦悩された苦いご経験はありますでしょうか。また,こうした苦難をどのように乗り越えてこられたか,その秘訣がありましたらご教示ください。

高島:これまでを振り返ると,私自身も研究テーマに応じた成果が出ずに試行錯誤した苦い経験はいろいろとあります。ここでは具体的な内容については控えますが,こうした状況に陥ったときは,米国ではよく“Think outside the box”と声をかけたり,かけられたりします。日本語に直訳すると,「箱の外で考えよう」となります。つまり,今悩んでいる問題から一歩引いて,俯瞰的な視点で既成概念や固定観念にとらわれずに考え直してみようということ,日本語でいう「傍目八目」です。私には,周囲の人からこの言葉をかけられて,問題を上手く解決できた経験があります。以前から光学分野では「レンズ設計において収差論をどのように使うか」という課題がありました。例えば 3次収差,5次収差,7次収差とレベルを上げて複雑なことをしてレンズシステムを解析してもそれはきりがないのです。私は当時,この課題に対し「なぜきりがないことをしなければならないのか」と疑問に感じたことがありました。そこで,少し視点を変えて収差論をレンズの解析に使うのではなく,以前から言われているように,レンズを一から合成することに注力するようにしました。また,その過程においては幾何光学にとどまらず,古典的な収差論を使って物理光学とのインターフェースがとれるようにして,物理光学の効果を収差論に基づいたレンズ設計に落とし込むような設計方法を研究しました。43_51960年ころにある光学技術者が収差論の使い方についていろいろとチャレンジしていますが,そのリバイバル版のような手法を用いて行い,例えばホログラフィックメモリーのためのレンズ光学系がどのようなものではならないかという問いに決着をつけたことがあります。これは,まさしくThink outside the box による考え方が奏功した事例であるかもしれません。こうした経験もあり,困難な局面に遭ったときには“Think outside the box”と自分自身に言い聞かせるようにしています。
 また,研究内容は当人が客観的に見られない場合もありますが,そんなときに周囲の誰かが「それは,ダメだよ」と率直に助言してくれる人がいると助かります。そこで,議論にも発展すれば,そのうちにさらなる名案がひらめいたりすることもあるわけです。私の場合は,スタンフォード大学の学生時代に研究室でさまざまな国々から来ている学生たちと議論する機会があり,もともと考え方のベースが異なるため,ストレスフルな反面,私とは相違な見方で忌憚なく意見を発言してくるので,とても有意義な経験でしたね。今振り返ると,学生同士がそれぞれ客観的に自分自身を見直すことができる環境にあったと思います。 <次ページへ続く>
高島 譲(たかしま・ゆずる)

高島 譲(たかしま・ゆずる)

1990年京都大学理学部物理学科(学士)卒業・取得。1990年(株)東芝入社(生産技術研究所 精密技術研究部に配属)。2000年スタンフォード大学電気工学科リサーチアシスタント。2003年スタンフォード大学電気工学科(修士課程)修了。2007年同大学電気工学科(博士課程)修了,同科ポストドクター。2010年スタンフォード大学電気工学科リサーチアソシエイト。2011年アリゾナ大学光科学部准教授(カレッジオブオプティカルサイエンス在籍)
●SPIE(国際光工学会),OSA(米国光学会)所属

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