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世に出ていない最先端の技術と装置の創出を目指して(株)フォブ(FOV) 代表取締役 大出 孝博

「運・鈍・根性」の3つの資質を備えること

聞き手:これから光学分野でさらなる活躍を目指す若手研究者・技術者,将来の活躍を目指す学生に向けてメッセージをお願いします。

大出:まず私が感銘を受けた内山社長からの言葉「常に最前列に立て」を贈ります。次に「運・鈍・根」でしょうか。
 “運・鈍・根”は結構いろいろなところで言われていますが,私がこの言葉を知ったのは電子回路やノイズの研究で有名な伊藤健一氏の著書によってでした。「運」は“運を呼ぶ”という意味ですが,内山社長の言葉を借りれば「これは運(うん)と読むのではなく,運(はこび)と読む」のだそうです。運(うん)と言えば,偶然降って湧いた他力本願のようなイメージですが,運(はこび)と読めば,幸運を自分の所へ手繰り寄せるという意味になるからだと。「鈍」は,“鈍感”の鈍を意味するものです。例えば1つの研究・開発に取り組んでいると,周囲からさまざまな意見を耳にすることもありますが,あまり細かいことを気にすると真っ直ぐ前に進めませんし,他のテーマに目移りすることもありますので,多少の鈍感さも必要との意味です。
「根」は“根気”を意味します。やはり,根気がないと研究や開発で困難を乗り越え目標に到達できせん。何事も簡単に諦めては駄目です。
 “運・鈍・根”の資質を備えない人であれば,装置を製作しても思い通りに動作しなければ,わりと簡単に「これは駄目だ,傷口を広げないうちに早く止めよう」と思うでしょう。それに対し“運・鈍・根”を理解するもしくはすでに備わっている人であれば,このような状況に直面しても自分を信じて再び懸命にチャレンジするわけです。そこで必死に追い求めることで,不思議とその問題の解決に必要な情報やヒントがその人の元に“運(はこ)”ばれてくるのです。だからこそ,こうした開発過程ではフォブの社名の由来にもなっている広い“視野(the field of view)”が必要になってくるのです。
 実は,この3つの資質を備えた若い研究者・技術者は,私が知る限り,結構多いのです。私自身が装置の開発に直接携わっていることもあり,若い技術者や研究者と接する機会も少なくありませんが,今の若い人たちは非常に優秀な人が多く,私の若い頃では想像もできないようなことを発想したりするので,むしろ感心することの方が多いですね。もし日本の若者がすべてこれくらい優秀なら,日本の未来はバラ色だと思うほどです。
 つい最近までフォブの仕事を1人の若い技術者に手伝ってもらっていました。彼は,すでに理化学研究所で仕事することが決まっていたので,「それまでの間,私と一緒に仕事しませんか」と誘って来てもらったのです。わずか数カ月間にもかかわらず,かなり多くの仕事をこなしてくれました。彼の優秀さは,知識や技術力もさることながら,“運・鈍・根”をすべて持ち合わせていたことです。本心を言えば,この先も一緒に仕事ができたらよかったのですが,さすがに理化学研究所には勝てません(笑)。
 このように今の若い人たち対し,私はマスコミが言うほど悲観的には見ていません。むしろ,優秀な素晴らしい人たちが多く,私の方が学ぶことも少なくないのです。 <次ページへ続く>
大出 孝博(おおで・たかひろ)

大出 孝博(おおで・たかひろ)

1978年北海道大学 工学部 電気工学科卒業。1978年日本無線(株)入社。1980年信州精機(株)〔現セイコーエプソン〕入社。1985年日本自動制御(株)〔現レーザーテック(株)〕入社。1991年米マサチューセッツ工科大学海洋工学科客員研究員 兼務。2002年大阪大学フロンティア研究機構ナノフォトニクスプロジェクト特任教授に就任。2003年ナノフォトン(株)設立,代表取締役に就任。2006年(株)フォブ(FOV)設立,代表取締役に就任。
1988年神奈川県工業技術開発大賞受賞(受賞対象:走査型カラーレーザー顕微鏡)。1998年神奈川県工業技術開発大賞受賞(受賞対象:広視野コンフォーカル顕微鏡)。2006年第18回中小企業優秀新技術・新製品賞中小企業庁長官賞(受賞対象:レーザーラマン顕微鏡)。

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