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ターゲット・オリエンテッドな技術的展開が次世代へ向けたものづくりの価値を構築する埼玉大学研究開発機構オープンイノベーションセンター 客員教授 山本 碩?

米国の軍・宇宙・エネルギー関連研究機関視察に触発

聞き手:何がきっかけで気付かれたのですか?

山本:切削の理論解析でもファクターに入っていませんし,どうやってもやっぱりおかしい。送りのムラが原因ではないかと計算しても1割のムラでも全然影響は出ないし,回転系の再現性を見ても問題はない。いろいろやるうちに直進運動系に行き当たり,運動状態を0.01μmレベルで測ったところ,見事に粗さに応じて動いていたので「あ,これだっ!」と分かりました。それまでに半年ぐらい掛かりました。当時,このレベルの磨きは機械加工では無理でしたから職人さんに「表面粗さを0.1μmに!」とお願いしたところ,「しょうがねえな」と怒りながらも快く磨いてくれました。刀鍛冶の相方のように私も手伝いました(笑)。
 私がいろいろと超精密技術の開発を手掛けていることから,上司が,1981年の超精密技術に関する訪米調査団に参加するよう仕向けてくれました。東洋大学の木下先生が団長で,大阪大学の難波先生が副団長といった20名程の調査団に加えてもらいました。

聞き手:米国の防衛関連の,それも最先端技術の公開は珍しいのでは?いかがでしたか。

山本:いや,もう,ものすごく刺激的でしたね。10日程でしたが,ローレンス・リバモア国立研究所,サンディア国立研究所,NASA,スタンフォード大学,TRW,ムーアなど,世界の最先端の研究をやっている軍・宇宙・エネルギーの研究所を視察することができました。このときにギブ・アンド・テイクということで,日本も開発結果を発表することになり,私はポリゴンの発表をしてきました。米国の規模からすると小さい実験ですが,同じ研究開発をしている人たちに対して,米国はとても友好的でオープンでした。非常に視野が広がりましたね。日本における加工技術はいわば下請け的な世界でしたが,米国ではいろいろな材料技術,例えばダイヤモンドで鏡面を作るためにはどうすればいいか,光学性能からどういう表面の状態が求められるか,といったさまざまな研究が行われていました。この経験から,キヤノンの光学設計者の人たちとの交流の中で,『SPI』などの米国技術雑誌を取り込んで勉強するようにもなりました。1987年に2回目の調査団にも参加させてもらった時は,NASAの科学者が磨きのメカニズムを研究していたのを知り驚きました。日本だと“職人技”として確立して,それを機械に転化する考えはありませんでしたから,考え方が全然違っていましたね。 <次ページへ続く>
山本 碩?(やまもと・ひろのり)

山本 碩?(やまもと・ひろのり)

1969年,九州大学工学部工学研究科修士課程修了。同年,キヤノン(株)に入社し工作機械設計課に配属。1982年に生産技術部主幹研究員,1983年に超精密研究部機械要素研究室室長。1994年(?97年)九州大学工学部非常勤講師,1996年生産技術研究所所長。1998年に生産本部副本部長,1999年に取締役兼コアテクノロジー開発本部長,2001年にディスプレイ開発本部長。2003年に同社先端技術研究本部部長に就任し,日本機械学会の生産加工・工作機械部門部門長を兼任。2004年に同社常務取締役,日本機械学会のフェローに。2005年に同社生産技術本部長兼グローバル環境推進本部長に。2007年,キヤノン電子(株)に移籍し取締役副社長就任。2010年に?埼玉県産業振興公社(旧・?埼玉県中小企業振興公社)の理事長を就任,2012年に同公社を退任。同年4月,埼玉大学研究開発機構オープンイノベーションセンター客員教授に就任,現在に至る。研究・専門テーマ:精密機械要素,精密加工機,精密加工

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