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社員が成長しなければ会社は成長しません(株)日本レーザー 代表取締役社長 近藤 宣之

人事制度もモチベーションを上げる一手段

聞き手:お話を聞いて興味がわいたのですが,何か特別な,他社と違う人事評価制度は作られているのでしょうか?

近藤:ええ,独自のものを作っています。まず,基礎能力手当というものがあります。これは現代版の「読み・書き・そろばん」なんですね。要するに,対人対応能力やコミュニケーション能力という社会人としての基本の部分です。日本レーザーではまず英語が挙げられます。判断にはTOEIC*を使っています。例えば500点未満の人は月額手当ゼロ。500点だと5,000円,600点は1万円,700点は1万5,000円,800点は2万円,900点以上は2万5,000円と決まっています。月額ですから,1年にすると900点以上の人は30万円の手当が支給されるわけですね。日本レーザーはこれを一生支給するので,30年間勤めたら900万円も英語の手当が入るのです。ただし評価は,毎年更新されます。一度900点を取ったらずっと同じ手当が付くわけではありません。更新の頻度は,800点以上の人は2年に1回,700点台以下の人は毎年受けなければいけません。もう一つの「そろばん」はコンピューターです。パソコンやITなどを運用できる能力です。ブラインドタッチができる方が評価が良くなるというのもあります。これは英語と違って相対的な評価ですね。
 また,コミュニケーション能力で一番大事だと思っているのが対人対応能力です。挨拶がきちんとできるか,対応がいいか,返事がいいか,親切か,明るいか,姿勢がいいか,お客さんの応援団がたくさんついているかなど,いろいろありますが,要はその昔「性格」といっていたものを評価基準に持ってきました。「おれは性格が暗いから」と言い切ってしまうのは間違いだと思っています。それは能力なのです。相手を気持ちよくさせるのも能力のうちでしょう。相手から,「あの人は感じがいい人だ」,「一緒に働きたい」と思ってもらうのも能力じゃありませんか? 自分に笑顔がないと思ったら,毎日,オフィスに来る前にエレベーターの前のトイレで鏡を見てから会社に入れ,と言っています。訓練すればそれは良くなるのです。
 それから実務能力というものがあります。これは,例えば経理だったら経理業務,営業だったら商品知識,技術だったら修理の技術など,これもまたいろいろあります。昇格や本給を決める際にこうした能力が反映されます。また,日本レーザーの非常にユニークな点は,管理職の課長,次長,部長の役割手当が10段階ぐらいあることです。これによって,本人のモチベーションを下げずに正当な評価ができます。わたしは目に見えるような降格はしないよう工夫しています。さらに本給も下げません。10段階の評価はそうした時,非常に使い勝手がいいのです。

聞き手:本給が下がらなくても,月額の給与が下がることはあるのですよね?

近藤:ええ,そういうこともあります。ほかの会社で「賃下げ」といったら大変な問題ですよね。ところが,日本レーザーの制度は合理的にできていて,みんなに納得してもらえます。評価そのものは役員全員でやります。今,役員は6人いて,さらに管理部長をオブザーバーとして加えて7人で評価しています。中小企業ですとオーナー社長が個人の「好き嫌い」で決めていくことが多い。そうやって決めても,オーナー経営であれば別に社員から文句は言われないのです。個人企業では,社長に嫌われたら辞めるしかありません。どんな会社でもみなそうでしょう。
 一方,日本レーザーは先ほど言ったようないきさつで会社を作っているから,わたしは今,オーナーではないのです。役員持株会の中では一番多く株を持っていますが,ほかのメンバーのみなさんが「近藤さんはもう適切じゃないから,役員持株会の代表を降りてもらう。代わりにAさんになってもらう」と意見が一致したら,持っている株数が少ないのでわたしは勝てません。役員持株会の代表が代わるとその代表が社長になるという仕組みになっていますから,社長は自由に替えられるのです。これがオーナー経営だったらそうはできません。そこがうちのいいところなんです。

聞き手:仕組みとして作り込んであるところがすばらしいですね。

近藤:社員の評価については役員の総意で決めます。先ほどの基礎能力手当や,英語によるコミュニケーション能力,コンピューターの運用能力,態度能力,そして,課長,次長,部長としての貢献度の評価によってですね。それから,ボーナスは業務の場合には考課賞与だけですが,営業と技術では粗利の3%を還元することになっているので,かなり成果主義的な要素があります。営業の場合,粗利の3%,すなわち100万円の粗利を稼いだら3万円は自分の賞与になるという分かりやすい仕組みです。
 昔はそれを自動的にA君という一人に全額渡していたのですが,最近は,「この案件を受注するのに誰の協力を得たか」ということを加味するようにしました。例えばB君の協力を得たとすれば50:50の分配ですよね。さらに,それを納入するのに技術員が手伝ってくれたとします。技術が納入したことで1年間の保証というアフターサービスが出てきますね。そのサービスは技術が行くことになるので3者で1/3,1/3,1/3ずつに分けます。そういうチーム主義にしたのです。
 さらにもっと言うと,仮に3万円を2人で分けたとすると1万5,000円ずつですが,そのさらに半分をグループにプールしてしまいます。自分の取り分は半分の半分だから1/4になりますね。同様にそのグループにグループ員全員がプールして,これを資格に応じて山分けするのです。そうすると,部長や次長は自分が直接売り上げを上げなくても,山分けのところで取れるわけです。そうした方法を各部に任せて運営しています。

聞き手:とても面白い方式ですね。

近藤:要は,結果として社員のモチベーションが上がって,業績が良くなればいいわけです。そういう意味では,人事制度はあくまで手段であって目的ではありません。ただし,これらは日本レーザーのビジネスモデルに最適化されているから,別の会社がこのマネをしてうまく行くとは限りません。100個会社があれば,人事制度は100個ありますから。
 こうした社員の高いモチベーションのお陰で,社長就任以来,今年も含めて18年間連続黒字です。今後も社員とともに「夢と志の経営」を実践していくつもりです。

聞き手:非常に日本的というか,最適化された制度になっていることがよく分かりました。本日は非常に興味深い話をありがとうございました。
近藤 宣之(こんどう・のぶゆき)

近藤 宣之(こんどう・のぶゆき)

1968年3月,慶應義塾大学 工学部電気工学科卒業。同年4月,日本電子株式会社に入社。電子顕微鏡部門応用研究室に勤務。1970年5月?12月,当時のソビエト連邦レニングラードとモスクワに駐在。1972年9月,全国金属産業労働組合同盟(ゼンキン同盟)日本電子労組執行委員長,東京地方金属副執行委員長,ゼンキン同盟中央執行委員兼任。組合役員退任後,経営管理課長,総合企画室次長等を歴任後,1984年11月に米国法人副支配人に就任。1987年4月,米国法人総支配人。1989年6月,日本電子取締役兼米国法人支配人。1993年1月,同社取締役営業副担当。1994年5月,株式会社日本レーザー代表取締役社長に就任,現在に至る。1995年6月に日本電子株式会社取締役退任後,日本レーザー社長専任。1999年2月,日本レーザー輸入振興協会会長,現在に至る。2007年6月,JLCホールディングス株式会社設立。代表取締役社長に就任,現在に至る。同時にマネジメントエンプロイーバイアウトにより日本電子株式会社より独立。2011年5月,第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞,中小企業長官賞を受賞。

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