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社員が成長しなければ会社は成長しません(株)日本レーザー 代表取締役社長 近藤 宣之

成長の前提は社員のモチベーション

近藤:幸いにして,1年目で受注も売り上げも伸びて,1994年度は単年度決算で黒字になりました。ところがそれだけでは再建できません。再建できた本当のターニングポイントは,わたしが日本電子の取締役を辞めたことだと思います。辞めた理由は以下の通りです。わたしは日本電子の最年少役員のまま日本レーザーの社長に就任しましたよね。それで,1年目は幸いにして黒字になりました。そんな折,社員がこういうことを言っていると聞いたのです。「近藤さんは日本電子で最年少役員だね。それで,20代?30代に労働組合の委員長も経験しているし,40代にはアメリカで国際経営を経験しているので,今度は日本の中小企業に来て債務超過の会社を再建できれば勲章ものだよ。それで本社に戻ってもまだ50代半ばで,次期社長は間違いないね」と。
 確かに債務超過の中小企業を再建するには,てっとり早く累損を一掃すればいいわけでしょう。そのためには,従業員の給料を上げなければいい。経費をカットすればいい。投資もしなければいい。そういういわゆる「ケチケチ経営」をやれば何とかなります。普通,再建者とはみな,そういうことを考えます。そうすれば累損が一掃でき,2年か3年で本社に対する復配も実現し,それで帰っていくのだろうと従業員は考える。「何だ,おれたちが頑張ることは,近藤の出世の手伝いをするようなものだね」と飲みながらそう言っていたのだそうです。わたしも,「確かにそれはそうだな」と思いました。幸い1年目で黒字転換できたけれど,累積赤字はまだあるわけです。よっぽど頑張らないとこの累損は一掃できないし,それは社員のモチベーションを上げるしかない。ここでキーワードの「モチベーション」という言葉が出て来ます。それがその後の経営のキーワードにずっとなっているのです。

聞き手:近藤社長のお話にはよく「モチベーション」という言葉が出てきますね。そこが原点だったのですね。

近藤:そうです。その時に思ったのは,会社を再建するのも,会社を発展させるのも,新規事業に取り組むのも,需要を拡大するのも,すべて社員のモチベーションだということです。社長が細かいことを何でもかんでもできるわけではないから,実際には社員にやってもらいますよね。それぞれの部門を担当する社員がレベルアップして成長しないことには,会社自身も成長しません。よく,「社長の器以上に中小企業は成長しない」といわれますが,もっと強調したいのは「社員の成長がなければ会社は成長しない」ということです。そして,社員の成長の前提はモチベーションなんですよ。意欲ですね。だから,モチベーションが上がるような工夫をしなければならないと考え,ずっと人事制度や賃金制度,退職金制度,休暇制度,手当制度などいろいろ変えながらやってきました。

聞き手:まさにその通りと思いますが,なかなかそういう考え方ができない経営者は多いと思います。近藤社長は何が違うのでしょうか?

近藤:それはたぶん,わたしが労働組合の委員長を11年やってきたせいだと思っています。労務管理や人事管理に関して人事部のような専門部署ではありませんが,それを会社に実現させる側としてかかわってきたので,モチベーションを上げるための工夫を常に考えてきました。再建1年目にそこそこ何とかなったので,2年目に入る前に本社のトップと相談して,その年の6月の総会で日本電子の役員を退任して日本レーザーの社長に専念したいと申し出ました。親会社の思惑もあって,これが受け入れられたわけです。
 1995年度がスタートする時に,社員に向かって「わたしは日本電子を6月の株主総会で辞めることにした」と宣言しました。「これからは日本レーザーの社長に専念するから,ここに骨を埋めるつもりで君たちと一緒に頑張ります」と言いました。さらに「君たちも,自分たちの努力で会社を存続させるわけだから,『赤字になれば親会社はわれわれの会社を清算する』という状況をよく考えて頑張ろう」とも言いました。これが非常に良かったのです。この宣言で社員がやっと本気になってくれました。そうすると,なぜか運も味方してくれるのですね。そういうスピーチをした直後の1995年4月に,なんと1ドルが79円75銭という円高を記録しました。輸入企業の日本レーザーとしては,仕入れ値が非常に安くできるので,これはとてもありがたい話です。もう一つ運が味方したのは,自社品で手掛けていた光ディスクマスタリングシステムという,光ディスクの原盤を作る装置の受注が大手企業から取れて,売り上げが上がったことです。そういうことが重なって,2年目で累積赤字を一掃できました。1996年3月期で一掃して10%の復配を実現しました。これは予想より早い結果でした。
近藤 宣之(こんどう・のぶゆき)

近藤 宣之(こんどう・のぶゆき)

1968年3月,慶應義塾大学 工学部電気工学科卒業。同年4月,日本電子株式会社に入社。電子顕微鏡部門応用研究室に勤務。1970年5月?12月,当時のソビエト連邦レニングラードとモスクワに駐在。1972年9月,全国金属産業労働組合同盟(ゼンキン同盟)日本電子労組執行委員長,東京地方金属副執行委員長,ゼンキン同盟中央執行委員兼任。組合役員退任後,経営管理課長,総合企画室次長等を歴任後,1984年11月に米国法人副支配人に就任。1987年4月,米国法人総支配人。1989年6月,日本電子取締役兼米国法人支配人。1993年1月,同社取締役営業副担当。1994年5月,株式会社日本レーザー代表取締役社長に就任,現在に至る。1995年6月に日本電子株式会社取締役退任後,日本レーザー社長専任。1999年2月,日本レーザー輸入振興協会会長,現在に至る。2007年6月,JLCホールディングス株式会社設立。代表取締役社長に就任,現在に至る。同時にマネジメントエンプロイーバイアウトにより日本電子株式会社より独立。2011年5月,第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞,中小企業長官賞を受賞。

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