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第22回 国際ディスプレイホログラフィーシンポジウム・ISDH ― 始まり・レイクフォーレストカレッジ ―

はじまり


 夏が近づくとなんとなく落ち着かなくなる。なにか計画の取りこぼしがないか,準備を忘れてはいないかと慎重になる。それは30年以上もの間,夏に定期的に開催されていたホログラフィーの国際シンポジウムに起因しているようだ。ホログラフィーアートの分野にとって欠かすことのできない特別な存在がISDH,International Symposium on Display Holographyである。それは1982年,第1回がレイクフォーレストカレッジの物理学の教授Tung Jeongによりはじめられた。
 Tung Jeong教授を皆,親愛の情を込めて,TJ(ティージェイ)と呼んでいるので,これ以降この呼称を使うこととする。レイクフォーレストカレッジは理工学の専門のカレッジではない。TJは物理教育という視点から,ホログラフィーは非常に面白く有効なテーマと考えた。彼はミシガン大学のEmmett Leith(1927~2005, Juris Upatnieksとともにレーザーを用い,初めてホログラフィーの3次元像を実現させた。)に連絡を取り,ホログラフィーを教える方法について論議している。そして,学内の学生への講義のみならず学外の一般向けに,毎年のサマースクールとして,ホログラフィーのワークショップをスタートさせた。このホログラフィーワークショップは,ディスプレイホログラフィー黎明期にプロアマを問わず,アメリカ国内に多くのホログラファーを誕生させ,活発な活動が始まるきっかけとなったことは確かである。TJはワークショップ開催だけでは満足せず,その数年後,国際シンポジウムを企画することとなる。これが,第1回ISDHであった。ちょうどこの時期,私はMITに在籍していて,ベントンから「面白いシンポジウムがあるが参加してみないか?」と誘いを受け参加することになったことは以前にも触れた。
 アーティストとして活動していた私には,展覧会に関連したシンポジウム以外,技術系やアカデミックな国際会議とは,それまであまり縁がなかった。国際会議といえば,ホテルのコンベンションルームなどで開催されるような会議を連想してしまうが,このレイクフォーレストカレッジでの国際シンポジウムは,想像していたものとは一味も二味も違っていた。到着早々の手続きの時,最初にカレッジマップが手渡される(図1)。レイクフォーレストはシカゴ郊外(シカゴから50~60 km)のミシガン湖畔に面した緑豊かな街で,カレッジは湖畔のビーチ公園まで歩いてもほどない距離の,素晴らしいロケーションにあった。アメリカの大学はどこもとにかく広大な敷地であるが,ここもカレッジとはいえその例にもれず一見してかなり広く,敷地内に点在するいろいろな施設は19世紀の様式をそのまま残した建物も少なくなかった(図2)。目的に合わせて歩いて建物間を移動するのは良い運動になりそうだった。 <次ページへ続く>

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