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第25回 Art in Holography 2 ロビン・フッド伝説の郷 ―ノッティンガムにて

イギリス紀行―ロビン・フッドの郷


 第2回国際シンポジウム“Art in Holography 2”が1996年9月14日から4日間,ロビン・フッド伝説の郷,ノッティンガム(イギリス)で開催された。ノッティンガムはロンドンから真北に約180 km弱,列車で1時間半ほどのイングランドの中心に位置している。ここでいうところのイングランドとは,日本語で私たちが国名として使うイギリス(英国)とは異なる意味をもつ。話は少々複雑になるが,英国のことを英語では略してUK(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)と表記される。さらに,Great Britainはイングランド,スコットランド,ウエールズに大別される。上記のノッティンガムがあるイングランドとはこの限定されたエリアのことを指すのである。シンポジウムの会場は,その地にあるノッティンガム大学であった。

余談―ロンドンの話


 筆者はそれまで英国と言えばロンドンしか訪れたことがなかった。パリのエコール・デ・ボザール(国立美術学校)に留学していた当時,ロンドンのシンフォニーホールでの連続パイプオルガンのコンサートが聴きたくて,月に1回,知人宅に1泊しながら通っていた。ついで?に,テートギャラリーやナショナルギャラリーなど名だたる美術館訪問は無論のこと,観光名所見学やブックストアーを求めて街中をうろついていた。帰国後はしばらく行く機会もなかったが,ロンドンの科学館でホログラフィーの展覧会“Light Dimension-The Exhibition of the Evolution of Holography”(1983/9~1984/4)が開催される機会に,10年ぶりに訪れることになった。この展覧会には,当時,東芝科学館に収めてあった立体作品(図1)が,主催者からの要請で現地に貸し出されていた。実は,作品貸し出しの手続きについて少しややこしい事情があった。開催にあたって,イギリスからこの作品について筆者に直接「展示したいがどうか」と問い合わせが入った。すでに筆者の所有ではなかったので東芝科学館に問い合わせたところ,石井に貸し出すならよろしいとの返事だった。つまり,窓口を石井にして東芝科学館から作品を借用し,責任をもってそれをイギリスの主催者に貸し出す。返却時も同様に石井を通して東芝にという話で,この展示が実現したのである。貸し出し期間は結局1年ほどとなったが,何事もなく無事戻ってきたのは幸いであった。

 このLight Dimensionは2か所を巡回して開催された。最初はバース(天然温泉の世界遺産の都市,お風呂(bath)の発祥地)のRoyal Photography Centerで開催(1983/6~7)され,その後,ロンドンの科学館に移動する。筆者は初めの開催地には行けず,ロンドンの科学館に向かったのである。展示会場風景(図2)には,筆者の立体作品を囲むようにSteve Bentonの歴史的なホログラム,“Rind Ⅱ”や“Crystal Beginning”が展示されていた。この大規模なディスプレイホログラフィーの展示は,イギリスのみならず広く世の中にホログラフィーを広める機会となったようである。

 そういえば,この時のロンドン行きの苦労話を思い出した。成田からヒースローに飛ぶ予定の当日朝,たしか2月ごろだったと思うが,朝目を覚まして外を眺めると東京が突然の大雪となっていた! 前日の天気予報ではそんな大雪注意報は出ていなかった。すでに20 cm以上は積もり,しんしんと降り続いていた。あわてて荷をまとめ,とりあえず空港に向かう。やっとの思いで成田にたどり着いたが,雪は一向に止む気配がない。予期せぬ天候に空港はほぼ麻痺状態で,結局,ほとんどの便は遅延か欠航となっていた。ロンドン行きも例にもれずその日は欠航した。首尾よければ翌日飛ぶ予定というが天候の状態では運行が未定だという。さて,こまった。ヒースローでは私を迎えてくれることになっていた。この展示に関わったEve Ritscher(イギリスのホログラフィーシーンのプロデューサーでありコレクターとしてもパイオニア)だったが,どう連絡しようか思案にくれた。まだ携帯電話やインターネットのない時代である。空港に泊まり込みはゴメンなので,その日は苦労しながらも自宅に引き返し,翌日出直すことにした。ところが,翌日も大雪の影響で交通は大混乱していた。空港に到着予定のつもりの時間を大幅に過ぎて,やっとたどり着いた時には,フライトの本来の出発予定時刻をとうに過ぎていた。格安チケットであったから,もう行けなくなってしまうのかとハラハラしながら発着掲示板を確認すると,なんと遅延していたので,ホッと胸をなでおろした。あれやこれやで数時間後,無事機内に。結局,ロンドンとは電話連絡もうまく取れず,出迎えは絶望的となった。ヒースロー空港到着後,重いスーツケースを抱えながら,慣れない市内のなかEveのオフィスを探し辿り着くという大冒険を経験した。それ以来,冬のフライトにはどんなハプニングが起こるか要注意と肝に銘じたのである。

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