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第2回 不完全な記憶・Encounter“出会い”

 後でわかったことだが,このマケットの審査委員の一人である堀内正和氏(抽象彫刻の第一人者)が,ある時,私に話をしてくれたところによると,「形も変な,訳の分からないマケットがあって,他の審査委員は目もくれなかったのだが,あなたのホログラムのことは,半年ほど前の個展の時,画廊でよく話を聞いていたので,皆に『こうやって照明を当てると画像が見えるから,ここに来て,ほら見てごらん』と言って,他の審査委員にいろいろ説明してあげた」らしいのです。それで,なにか面白そうなものだということで入選になったらしい。堀内氏の言う,半年ほど前の個展というのは,その画廊は私にとって初めての会場で,もしその時,彼が画廊回りをしていなかったら,もし私が会場にいなかったら,ホログラフィーを見てもらう機会も説明することもできなかったし,興味を持って熱心に聞いていてくれたことは,ホントに偶然の出会いであった。その時,私は彼が何者かを全く知らなかったのである。
 入選の知らせは,うれしさ半分で,残りの半分は,「さて,どうしたものか」と思案に暮れた。とにかくこれは一大事である。何とかせねばと,夢中で大型ホログラムの制作実現に奔走した。
 ホログラムが新しいメディアとして,ちょうど脚光を浴び始めた時期でもあり,大学と企業が参加して,とにかく“世界最大の白色再生ホログラムを制作するプロジェクト”を立ち上げることに成功した。東工大と共同研究の富士写真光機(株)(現フジノン(株))が技術サポート,そしてNEC 宣伝部がCI(コーポレートアイデンティティ)のメディアとして,国内最初の大型ホログラムを活用することを承認し,制作実現に漕ぎつけることができた。私はというと,アートディレクターとして制作にかかわり,同時に,並行して野外作品用のホログラムを制作することが了解されたという次第だ。
 無謀な応募に始まって,ついに実現した,前衛的かつ実験的な野外環境作品「不完全な記憶Ⅱ」は,図Bおよび図B-1である。レインボウホログラムのサイズは80 cm×100 cm,上の半リングはFRPに塗装を施したもの,透明な板はポリカーボネート。ホログラムの背面には太陽光を追尾するミラーが取り付けられ,常に反射光がホログラムに照射されるように太陽を自動追尾する装置となっている。野外の展示のため,設置には地面の基礎工事を始め,芝の植え付けまで含めて数週間かかった。
 グランプリ審査の当日,実はホンネを言うと,30パーセントくらい賞を期待していた。動力や水,風を取り入れた野外作品はこれまでにもあるが,ホログラムによって太陽の光を作品に取り込み,天候に呼応して変化する,全く新しいタイプの環境作品が実現したと自負していた。ところが,結果はさんざんであった。美術館は山の上にあって天候は変わりやすく,日照時間も少ないことが分かった。審査当日も曇天。そのため,画像は全然見えなかったようだ。たとえ日が差していたとしても,ホログラムの見方を知らなければ,正面の画像に気付かないかもしれない。そもそも私の作品は,形の全体が必要な要素の集合で成り立っていて,従来型の造形美を求める制作態度とは対極にあるので,全く理解されなかったのである。
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