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第2回 「田舎のネズミ」を自任する寺田賢治先生―産学現場に阿(おもね)ない疾走にエール―

1.自称「田舎のネズミ」宣言の意味


 寺田賢治先生は,画像センシング研究の老舗(しにせ),慶應義塾大学 中島真人研究室のご出身である。そして,多くのお弟子さんのなかでもこの狭くない研究界にあっても前述のとおり寺田先生は異彩を放って疾走中でおられる。また,筆者の敬愛する中島真人先生のお弟子さんであるが故なのか,私なんぞにも心許して面白い学会的交 流を演出してくださった。このことの秘密にも迫りたい。これら2つが本稿で寺田先生にお声かけさせていただいた筆者の動機である。
 下記が,寺田先生の学と職のご略歴である。一点の曇りもなく人も羨むキャリアであるが,失礼ながらそこには私にはあんまり興味はわかない。このまっすぐなキャリアと上記の異彩ぶりとのギャップに心惹かれているのである。

<寺田賢治先生のご略歴>
埼玉県立浦和西高等学校卒業,慶應義塾大学理工学部電気工学科1990年卒業,同・理工学研究科電気工学専攻修士課程1992年修了,日本学術振興会特別研究員DC,同・後期博士課程1995年修了(博士(工学1995年3月))。徳島大学助手,講師,助教授(准教授)を経て教授。徳島大学副理事/徳島大学創新教育センター長/理工学域副学域長/理工学部副学部長(総務担当)。


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写真2 寺田研究室紹介(計測と制御,Vol.53,No.2,pp.151−152(2014)より)


 寺田先生の研究室では画像処理に関する研究のなかでも,産業応用に関するものが多い(写真2)。それも地域の特性を生かして,一般なアルゴリズムでは検出が難しかったり,誤検出が多かったりする対象に対する重い課題を請け負うようなニーズが多く,例年,10社ほどの会社と共同研究を推進されている。
 例えば,火災検知,交通監視,工業応用,農業応用,人の行動解析などがある。なかでも,農業応用に関していえば,徳島は関西の台所と呼ばれるほどに農業が盛ん であるが,ウイルス性の病害が問題となっている。そこで,ウイルスを媒介するような病害虫を検知するシステムの開発にも熱心に取り組まれている。
 ご研究の膨大な成果に纏(まつ)わり,かくも多種多様に継続維持されている産学共同研究が寺田先生ご自身の礎にも原動力にもなっておられると拝察している。このことは,次で注目する2つの話題に深く遡及する意味で,特記に値するかもしれない。
 さて本稿は,序で述べた2つの話題,「外観アルコン」の舞台裏,および学術交流的キャッチボールにて発せられた「田舎のネズミ」宣言に集中したい。

<次ページへ続く>

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