【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

すこしだけ待てば次の朝,光学はまた楽しくなるモンタナ州立大学 Joseph Alan Shaw, Ph. D.

自然の中で見えるさまざまな色やものについて理解したい

聞き手:光学分野に進まれたきっかけと,また,光学に魅了された理由などをお聞かせください。

Joseph:私の父は物理学の教授でしたが,天文学にも興味を持っていました。その影響もあってか,私が子供のころから,父は星や惑星の話をしたり,一緒に観察をしました。
 その後,私が高校生になったときに,写真撮影に興味を持ち,それがきっかけで光学に興味を持つようになりました。
 私の研究は,何かの問題を解決するための新しいリモートセンシング機器の開発や,その実用化をする事です。今日の講義(2016年3月23日開催のオプティクス教育研究セミナー:p.515の写真)でもお話したように,私は自然の中で見えるさまざまな色やものについて理解しようとしています。それだけではなく,その計測をどのように実用できるのかにも挑戦しています。
 例えば私の博士後期課程の時がいい例です。私がティーンエージャーのころ,写真を撮った時,疑問に思ったことがあります。それはよく知られるグリッター(キラキラ輝いている)パターンの事です。
 このグリッター・パターンは水からの光の反射を連続的に示すものです。太陽が沈んでいるとすれば,水に太陽の光が反射し,その反射が直線に見えます。我々はこの反射の事をグリッター・パスまたはグリッター・パターンと呼びます。その時は,それが太陽の光である事はわかりましたが,写真を撮る時はその現象の事はよく知りませんでした。
 そしてその後,私が博士後期課程の時,何人かの人が海の表面の小さい波をどのように測るのかという問題を私の所に相談しにきました。
 海の波を考えると,潮の満ち引きによる大きい波だけではなく,風の影響で生じる小さな波もあります。よく観察すると,実はこのさざ波が動いていて,太陽の光が輝いていてキラキラとしていることが分かります。このさざ波からの反射はグリッター・パターンを作り,その組み合わせがグリッター・パスを作ります。
 つまり太陽光の輝きの写真から海の荒さを測定する事ができます。しかし,そのためには正しい角度で太陽光を測定しなければなりません。
 観察する側にとっては,できるだけどんな時でも測定を行いたいのですが,自然の太陽では角度が限定されてしまいます。そこで,測定のためのグリッター・パターンを作るというアイデアが頭に浮かびました。人工的なレーザーを用いて,グリッター・パターンを作ります。その光の反射から波の傾斜を解析する事ができます。
 このようなことが,私が写真撮影に興味を持っている例の一つです。自然な光学現象の中にある測定は,誰かが必要になる事もあるので,今でも自然現象の中にある何かしらの測定を続けています。例えば,冬の太陽がない時期に北極の高空にある雲を衛星で測定する事はとても困難で,我々はこの問題を解決できる技術開発にチャレンジをしています。
 測定には赤外線や熱赤外線などを利用する方法がありますが,実際に観察すると雪と雲からの熱赤外線は似ています。つまり,可視赤外線と熱赤外線の波長から低いコントラストが存在しています。そこで,私たちは地面から上に向ける高いコントラストができる熱画像を用いる技術を開発しました。この方法で北極の雲の測定を行います。
 他には池の中にある魚を探す例もあります。その時には飛行機からレーザーを池に当てています。また,空の写真の偏光情報を利用して,空気の中にある分子を分析するといったこともあります。
 最近は農業に関する研究に力を入れています。農家では雑草の駆除に農薬を吹きかけ,それに結構なお金を使っていますが,私たちが,シンプルで低コストのイメージングシステムを開発すれば,そのシステムをトラクターに付けることで,ピンポイントに農薬の吹き付けることができ,コストの削減が期待できます。

宇都宮大学オプティクス教育研究センターで開催されたオプティクス教育研究セミナー
(2016年3月23日)


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Joseph Alan Shaw

Joseph Alan Shaw(じょせふ・あらん・しょう)

University of Alaskaで電子工学を専攻し,University of Utahで電子工学の修士,University of Arizonaで光学の修士とPh.D.を取得。
Montana State University のOptical Technology Center(OpTeC)の,present Directorを務める。SPIEとOSA会員。
●研究分野
光学リモートセンシング機器の開発,放射測定と偏光イメージングとライダーのキャリブレーション

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