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やりたいことがまだ山ほどあります東海大学 名誉教授 佐々木 政子

光化学の世界的貢献者の一人に

佐々木:東海大のPUVA光化学療法研究は,いろいろな波及効果的な研究を生み出しました。その一つは,薬剤性光線過敏症という皮膚障害のメカニズム解明です。今,日本人は高齢化という理由もあるのですが,薬をたくさん使いますよね。実は,それが原因で光線過敏症になる人が多いのです。ある薬を飲んでいると外に出ただけで皮膚が日焼けするような症状になるのです。わたしは医学部の皮膚科の先生と分子生物学の先生と組み,そうした原因となる薬があった場合に送ってもらって,まず蛍光の溶媒依存性を測定して,細胞のどこに取り込まれるのか細胞内親和部位を予測し,次に分子生物学的に解明するという方法を採ってきました。さらに,東海大学にはとても自由な研究環境があります。PUVA光化学療法研究以外にも,ヒトの色覚発現の生体外シミュレーション(粘土でロドプシンを作る)や,オゾン層破壊で増加する太陽紫外線UV-B(280~315nm)の計測器を開発したりしました。日本で最初の気象庁でのUV-B計測には,この測器が使われました。
 電気化学協会の関東支部会で「未踏科学を探る会」という会が始まった時,1978年の第1回の講演者として呼んでいただきました。PUVA光化学療法研究を元にした「メディカルフォトケモセラピーの提案」という内容の講演でした。その後も京都大学や筑波大学などに呼んでいただいたりしました。第21回国際光化学会議(21st International Conferenceon Photochemistry:総合テーマ“光による物質変換:分子操作から生命と環境まで”)が開催された時に,「光化学の世界的ニーズとわが国の貢献」という図にわたしの名前が入っていました。長倉三郎先生,田中郁三先生,松浦輝男先生,本多健一先生などそうそうたるメンバー31人の中に,女性としてただ一人,わたしの名前を見つけた時は,とてもうれしかったですね。

聞き手:お気持ちが分かるような気がします。

佐々木:わたしの小さな研究室では,大研究室でやるようなテーマと取り組んでいるから大変な苦労をしました。国立大学の大きな研究室で,今,若い人たちが「大変だ,大変だ」と言っているけれども,そういうところならばディスカッションする人も大勢いるし,環境はすごく良いはずなのですよね。それなのに何か今,日本中がおかしくなっているように感じます。卒研生や院生は小鳥が餌を待っているみたいな感じと言いましょうか。東大でも,一流の大会社でも,多くの若手研究者が自分で努力して何かを生み出すことができません。待ちの姿勢ですよ。だから,それを何とか打開する方法がないか,それがすごく心配ですね。
佐々木 政子(ささき・まさこ)

佐々木 政子(ささき・まさこ)

1961年,東京理科大学 理学部化学科卒業。同年,東京大学 生産技術研究所に文部技官として入所。1975年,東京大学 生産技術研究所 文部教官助手。1975年,東海大学 情報技術センター専任講師。1976年に東京大学にて工学博士号取得。1978年,東海大学 開発技術研究所助教授と同情報技術センター助教授・同工学部光学工学科助教授を兼任。1987年,東海大学 開発技術研究所教授と同大学院工学研究科を兼任。1997?2002年,東海大学総合科学技術研究所教授・所長付・同大学院工学研究科を兼任。1999?2002年,東海大学 総合研究機構研究奨励委員会委員長。2001?02年,日本光生物学協会会長。2003?07年,日本女性科学者の会会長。2003?07年,東海大学 特任待遇教授。2008年,東海大学名誉教授。現在に至る。専門分野は生命と環境にかかわる光科学。1994年度,東海大学松前賞,2005年度,東京理科大学博士会坊ちゃん賞,2007年度,第1回 日本光医学・光生物学会賞など,受賞多数。ほかに多くの審議会委員や学会理事などを勤める。

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