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若手は幅広くチャレンジしてほしい(株)ニコン 市原 裕

「やりたいことをやれ」

聞き手:本日はよろしくお願いします。まず初めに,市原さんのご経歴をお聞かせ願えますでしょうか? 学生時代も含めてお願いします。

市原:大学は東京大学の教養学部でした。基礎科学科という教養学部の専門課程です。東大は特殊で,駒場に教養学部があって,入学当時はそこでみんな一般教養を学び,2年の後期から本郷の方で専門を勉強するという形を採っています。たぶん,この教養学部の先生が「自分たちも専門を教えたい」という気持ちがあったのだと思うのですが,教養学部の中にも専門課程がありました。文科系と理科系の2種類があって,文科系には有名な教養学科があり,そこで国際関係論などを教えています。雅子様もこの学科出身なんですよね。

聞き手:それは知りませんでした。

市原:一方,理科系は教養学部基礎科学科といって,特定の学科に偏らず,いろいろな基礎科学を勉強して,応用が利く研究者を育てようとする趣旨で設立されました。わたしはそこにいたのですが,東大に入りながら本郷を知らないという特殊な境遇だったのです。

聞き手:ずっと駒場だったのですか?

市原:はい,駒場です,ずっと。普段はそういうこと(教養部出身)を説明するのが面倒なので,「おまえ,東大のどこ出身だ?」と聞かれたら,「物理だ」と答えています(笑)。

聞き手:教養学部にそのまま残るという道もあるのですか。

市原:ええ。教養学部には大学院がありまして,相関理化学課程という,物理と化学が一緒になったような修士課程を出ました。一応,本郷と同じように研究室があって,そこに配属されたわけですけれど,私は石黒浩三先生という,その昔,『光学』という教科書を書かれた先生のところに師事しました。われわれが学生のころは,光学の教科書というと,この石黒先生の教科書しかなかったような時代です。
 先生はもう亡くなられていますが,非常に面白い先生でしたね。お年をめされてからもいろいろなことにチャレンジされた方でした。わたしが学生のころにはもうかなりお年だったのですが,それでもヘルメットをかぶってバイクで大学に来られてました。研究室の学生みんなが心配してましたね,事故を起こすのではないかと。また,運転免許を取られたり,スキーを始めたり。石黒先生に「光学を教わった」という記憶があまりなくて,勉強以外のことばかり教わっていたような気がします。

聞き手:研究室は実験系だったのでしょうか?

市原:そうです,実験系です。修士論文はX線ホログラフィーでしたが,He-Neレーザーも作ったことがあります。失敗しましたが(笑)。作る過程でガラス細工をやったり,とても面白かった記憶があります。

聞き手:そちらの分野に進まれようと思われた理由は何だったのでしょうか?

市原:われわれの学生のころは,Gábor Dénesがホログラフィーの発明でノーベル賞を取った時代です。だから当時は,「ホログラフィーってすごいものだ」という考えがあったと思います。修論は「やりたいことをやれ」という感じでしたね。その代わりに,先輩が,ああでもないこうでもないと,いろいろ口を出してくれたのはありがたかった。
市原 裕(いちはら・ゆたか)

市原 裕(いちはら・ゆたか)

1973年,東京大学理学系研究科相関理化学専攻修了。同年,日本光学工業(株)(現 (株)ニコン)に入社し,研究所第二光学研究室に配属。研究室長である靏田匡夫氏の指導を受ける。1984年に精機事業部精機設計部第二開発設計課に異動し,半導体露光装置の開発や計測にかかわる。1988年,光学部開発課に所属。このころより,国際標準規格に携わる。2002年,コアテクノロジーセンター光学技術本部長兼光学技術開発部ゼネラルマネジャー。2003年,執行役員,コアテクノロジーセンター副センター長兼光学技術本部長。2005年,取締役兼執行役員。2006年,ISO/TC172/SC3国際議長。同年,研究開発本部長。2007年,常務執行役員。2008年,顧問兼市原研究室室長。現在に至る。

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