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第27回 続・イギリスへ再び―レイクフォーレストから羽ばたく―

CAT Center for Alternative Technology訪問


 現在自然エネルギーに関わっている堀内道夫氏(光と風の研究所主催)にウェールズで会議がある話をしたら,ウェールズに行くなら,帰路にはぜひCAT(代替技術センター)を訪れるようにと勧められた。代替技術とは環境にやさしい代替エネルギーを使うための技術という意味に使用され,いわゆるエコライフセンターである。
 会議の会場からCATへは,不慣れな英国のローカル鉄道を乗り継ぎ,最寄りのMachynlleth駅で降り(図4),CATの見学センターは町から少し離れた広い山中(起伏のある小高い丘)に位置している。見学には一日がかりとなるようで,この町に2泊することになった。センターに行きやすい場所にはシティーホテルなどはなく,フランスの田舎に多い宿泊施設のついたレストラン風情の宿,いわゆるオーベルジュ(Auberge)を予約した。夕食に一階のレストランに降りていくと,客はみな地元の人々のようで,陽気なおじさんが声をかけてきた。何かと思ったら日本人の名前を連呼している。サッカー音痴の私にも,それが日本人サッカー選手の名前だとすぐわかった。日本人の観光客などめったに見かけないと思われるこの田舎の地で,私がなぜ日本人と分かったのか知らないが,日本選手の名前を聞かされたことにも驚いた。日本人も少しずつグローバル化が進んでいるのかと思った。  翌日,バス時刻表を確認して出かけた。公道からビジターセンターへのアクセスは,専用のケーブルカーに乗る(図5)。広い敷地内に様々な施設が点在していた(図6)。風力エネルギー館では,風力発電の羽の大きさを実感できる工夫がされていた(図7)。ソーラーエネルギーのモデルハウス(図8)などが建ち,雨水を利用した循環式の水洗トイレや水を使わないバイオのトイレなどの実践も知ることができる。子どもづれのファミリーの見学者も多くみられ,エコライフを体験できる代替技術の啓蒙センターであった。情報館では書籍だけでなく,エコな家への改修の手伝いや新しい建築への具体的な相談コーナーも設けられていた(図9)。現在,地球温暖化とゼロカーボンの問題は世界的に大きな話題であるが,1970年代にこのセンターがスタートしたころはまだ一般的な認知はかなり低く,筆者が訪れた16年前でも,国内では積極的な興味はもたれていなかったように記憶している。広大な敷地のエコセンターに,多くの一般の見学者が訪れている様子は驚きであった。 <次ページへ続く>

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