【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

第19回 台湾交流録 part 5  建築空間へ

交通大学常設ホログラムプロジェクト

 交通大学の設置場所はすでに決まっていた。長方形の光電研究所の建物は,一階中央部が建物の両側に通り抜け可能なガラス張りの玄関ホールとなっている。ここが候補場所だ。天井高は約5 m,全体はかなり大きな空間である。そこで縦長最大サイズのレインボウマルチカラーホログラム(180 cm(h)×110 cm(w))を取り付けることにした。広い空間ではあるが透過型のインスタレーションとしての設営は無理と思われるので,ミラーを合わせて壁面に設置することにした。ラミネートやフレーム加工,輸送通関手続きなどは師範大学の経験が非常に役に立った。外光の入る明るすぎる空間は,ガラスばりの両側面の半分を厚いロールカーテンで覆い照明環境も整えられることになった。
 前年(2013年)に続きホログラフィーの夏季集中講座が開講されることになり,その時期に合わせて設置作業も行うことになった。ホログラムの背面にステンレスのミラーを重ねた(図1(b))。かなりの重量になるため,荷重全体を台座が受け止める構造とし背面を壁に固定した(図1(a))。
 レインボウホログラムは上下の視点の移動でイメージが大きく異なるため,最適な高さにするための設置の決定はいつも悩ましい課題だ。どの鑑賞者に合わせるのか。大人が観ている画像は実は小さな子供には何も見えていないといった現象は,ホログラムの展示ではよく見かける状況である。一般的に,展示は低めに設定されることが多い。高すぎる画像は見ることが難しいが,背の高い人はかがめば済む話だ。結局背の低い作者である筆者の身長(153 cm)に合わせることにし,台座の高さもそれに合わせて調整し制作した。ホールの床は磨かれた白色の石タイルであった。そのため,ホログラム面で反射した光が床を明るく照り返すのを避けるため,作品の前面の床部分だけカーペットが敷かれた。
 設置完成後, 地元のメディアも招待し除幕式が執り行われた(図2, 図3)。図4が完成作品Photon Drawing series EL #1である。ちょうど作品の向かい側にエレベーターがあり,ドアが開くと内部のミラーには向かい側のホログラムが映り込む。さらに,そこには石の床に映った色の異なる逆さホログラムも見て取れる(図5)。予期せぬ面白い効果の現出に,私は一人ほくそ笑んでいる。
 新竹キャンパスでの講座は2回目なので,実験準備も滞りなく進んだ。現像処理を必要とするホログラム製作は敬遠され,フォトポリマー(4×5インチ)を使用してワンステップレインボウ1点を各受講生に制作してもらった。最後に作品を公開展示(図6(a)(b)(c))して修了とする。大型のホロが設置された玄関ホールは外光も遮光されるようになり,ちょうどホログラムの展示会場としても良い環境となった。ワンステップレインボウの筆者のテストホログラム(図7)は疑似2色カラーのホログラムに見える。それは2枚のホログラムを前後に離して設営し同一の再生光を当てると,2枚は再生光の入射角が異なるため再生カラーもずれる。これを重ねて見ると図7となる。 <次ページへ続く>

本誌掲載号バックナンバー

OplusE 2021年1・2月号(第477号)

特 集
Nanostructured Optics
販売価格
2,750円(税込)
定期購読
15,000円(1年間・税込・送料込)
いますぐ購入

ホログラフィーアートは世界をめぐる 新着もっと見る

本誌にて好評連載中

私の発言もっと見る

一枚の写真もっと見る