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第5回 嘘のつけない画像技術研究の旗手,加藤邦人教授~現場とトレンドの剛毅朴訥な攻め~

4.学界への寂しがり屋的関わり方


 話題が変わります。
 加藤先生の学界での佇まいは独特である。筆者の知るところで視野が狭いことは堪(こら)えて頂き,

画像センシング技術研究会のステアリングコミッティ(ステコミ:運営委員会)幹事 SSII2018運営委員長
精密工学会(JSPE)画像応用技術専門委員会(IAIP)の運営委員 ViEW2021実行委員長


の二つの学術舞台に目を遣るなかで,どのように“独特な”な魅力と貢献を生み出しておられるか,その一端でも詳(つまび)らかにしたいと願う。

(1)画像センシング技術研究会にて -寂しがり屋の力にエール-
 寂しがり屋は,ピンチな時も良き時も,それらを独り占めにすることが居心地よくないようだ。幾つかの幸運に助けられてであろうことは言うまでもないが,加藤先生の気質には,産業技術総合研究所の佐藤 雄隆博士,画像センシング技術研究会会長である慶應義塾大学青木 義満先生,精密工学会画像応用技術専門委員会(IAIP)と画像センシング技術研究会(SSII)事務局の喜多社長をはじめとする,slackな,つまり緩々ながら骨太な信頼感と連携が息づいていると筆者は感じている。これは寂しがり屋である加藤先生の力の一端である,というのが私の意見である。写真4は,slackに闘う画像センシング技術研究会のフラッグである。
 ひとつだけ具体例を挙げる。2010年から今日までの長きに亘り,加藤先生は画像センシング技術研究会でステコミ(運営委員会)広報会員担当幹事として運営を支え牽引している。また,青木会長や佐藤雄隆ステコミ委員長と共に,“トロイカ”(3人組の集団指導体制)的にこれを牽引されているように筆者の目に映り,画像センシング技術研究会の将来は非常に明るいと思う。


写真4 加藤先生は,画像センシング技術研究会のステアリングコミッティ(運営委員会)で会員・広報担当幹事である

(2)ViEW(IAIP)にて -現場とアカデミア,歴史と今の狭間にエール-
 精密工学会画像応用技術専門委員会(IAIP/JSPE)とその一大ワークショップViEW(ビジョン技術の実利用ワークショップ)は研究者である加藤先生にとって,よきインキュベータであったと言ってよい。写真5はそのロゴである。ほどなく,IAIPでは運営委員に参画して,2020年にはIAIP副委員長を務めた。またViEW2021実行委員長にては,ワークショップの今後を模索する意欲的なテーマの下で問題提起的に働かれたことが印象的であった。そこで,とっておきのエピソードを紹介する。
 形式知ロジックのハンドクラフト的実装を磨いてきた画像技術は,至るところで深層学習技術DLに席巻されている。そんな時代の只中でViEW2021実行委員長であった加藤先生は,

今こそ世界に追いつき追い越す!ビジョン技術実利用の最前線
http://view.tc-iaip.org/view/2021/about/#greeting


のための具体策を模索しようと,そのテーマ実装を攻撃的に宣言された。状況の深刻さを受け止め,“剛毅朴訥”な風情にしては,いつになく非常に雄弁であった。私や,多くの諸賢はこれに刮目し,また時宜を得たよきメッセージは確実に参加者に届いたと思った。
 当時はコロナ禍の真っ只中であり,オンライン開催の弱点を補うべく国際画像機器展との交流プログラムも実施され,そのような運営姿勢が好ましく感じた。


写真5 若手研究者のインキュベータ,ViEWのロゴ

なおIAIPは,DIA(動的画像処理実利用化ワークショップ)も長年運営し,初回開催に際して写真6のようなロゴを制作している。バックヤードの秘密だが,このロゴはDIA2004山本和彦実行委員長の下で加藤先生がデザインされたというお話を伺い,その熱い思いとセンスに改めて新鮮な印象をもったことを思い出す。


写真6 DIA2004のロゴ(2004年3月4~5日,岐阜キャッスルイン)

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