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第4回 画像研究界を絵巻物的疾走中!旗手の青木義満先生

3.画像技術研究の絵巻物―デジタルのアナログ的・絵巻物的実装―


 今時,画像技術はデジタルでしかない。デジタルでしか実装できない宿命を克服するには物質現象に寄り添うアナログなセンスを大事にするしかない。研究の実際に即して,この難業をみごとに実現しようと疾走中の青木先生に学び,そしてエールを送りたい。
 そして,いの一番に共有したい大事なメッセージを私はすでに発見している。それは,教授就任時吉例(2017年6月14日)の特別講義にて公的に話されたものである。画像技術研究へのお考えを宣明しているので,ここに刮目したい。これが,本稿エールの基軸かもしれない。

“実学の精神”/現場から → 本質的基本問題(fundamental)と先端的課題(cutting edge)


 この画像技術研究における“実学”の精神と実際の試みをお聞きして,その姿を垣間見たいと考える。現場と本質的基本問題(fundamental)と先端的課題(cutting edge)の三点セットのワードに何かが潜んでいるのではないだろうか。

(1) 実学/顔認識の現場と顔学
 顔にカメラが向けられて顔画像が世界に溢れて,画像技術に期待が寄せられている。1995年3月7日には日本顔学会(JFACE:Japanese Academy of Facial Studies)が世界に先駆けて誕生した。当時,確か青木先生は学部4年生であり,この日本顔学会誕生の洗礼を受けたに違いない。写真3はその動かぬ証拠である。ここに見る顔の発見,顔パーツ認識,形状記述についての技術開発もさることながら,その先に来る個人認証やエージェントとしての顔メディア生成技術などの難題に注目されていたことは想像に難くない。あえて言うと,この顔研究事始めには,

“実学の精神”現場/身辺の日常 → 本質的基本問題(fundamental)と先端的課題(cutting edge)/顔学


なる青木式“実学”のスキームが見え隠れしている。

左:「感性擬人化エージェントのための顔情報処理システムの開発」(1995年~,IPA独創的情報技術育成事業)
右:「解剖学的知見に基づいた動的な顔の物理モデルの構築及びその応用に関する研究」博士学位論文(2001年)

写真3 顔研究事始め


(2)実学/日本の画像技術の曙,リモートセンシング画像処理の現場
 1970年代に気象衛星NOAから地上を俯瞰した画像群に触れたとき,筆者は非常に驚いた。当時,東京大学生産技術研究所では高木幹雄教授がまさにリモートセンシング(リモセン)画像処理を日本で初動させたのだ。時を超えて,この歴史的画像研究に青木先生もかかわられたことにまた静かに驚いた。写真4がその証拠である。現今の青木的画像技術“実学”につながる,極めて得難い薫陶がそこにあったと察する。

“実学の精神”現場/地球,global → 本質的基本問題(fundamental)と先端的課題(cutting edge)/デジタル気象学

写真4 衛星画像からの雲域推定(故高木教授との研究)


(3)実学/サッカー,ラグビーの現場
 スポーツに寄せる画像技術的関心も実績も,アスリートである青木先生には一日の長あり,である。よって,産業界からの期待に応える熱意も広がりも,顕著であり続けている。
 

“実学の精神”現場/ゲームフィールド → 本質的基本問題(fundamental)と先端的課題(cutting edge)/物体検出と機械学習深層学習(DL)技術


 ほんの一例であるが,写真5はアメリカンフットボールでのフィールド上の全選手の実時間追跡の実装を成功させたときの一コマである。この技術をラグビーにも展開し,写真6のごとく画像センシングシンポジウム2017(SSII2017)でデモンストレーション賞を受賞された。この“実学の精神”がSSIIフロアのこころに届いたのだろう。

写真5 アメリカンフットボールの動画像解析とプレーヤートラッキング

写真6 ラグビー映像解析の研究でデモンストレーション賞受賞(SSII2017)


(4)実学/デジタルサイネージの視線推定の現場
 青木研究室の関心は人の営みの微細部に及んでいる。微細部とは画像技術に避けて通れない,視覚を司る注意(attention)と意識(awareness,consciousness)のセンシングあたりの現象である。

“実学の精神”現場/顔と視線 → 本質的基本問題(fundamental)と先端的課題(cutting edge)/注意と意識の見える化


 写真7のように,顔画像解析と瞳認識のその先に,視線の先のどこにどのように注意意識を向けて関心をもっているかを伺い知ることを目指した顔センシング研究である。
 この研究は立ち止まっていない。キャリブレーションフリー視線推定では(2017年),モデルベースによる眼球追跡と学習ベースによる推定を統合して立ち位置拘束を解除し,さらに新規被験者を即座に追跡できるよう現場の要望に応えている。

写真7 顔と視線の画像センシングから注意と意識のセンシングへ


<次ページへ続く>

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