【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

人は変えられなくても,自分自身は変えることができる東京都議会議員 福島 りえこ

科学技術の理解がないとイノベーション起こせない

聞き手:最後に,理工学分野を学ぶ学生や若手の技術者に向けて,メッセージをお願いします。

福島:私は今でも理工系分野に進んで良かったと思っています。科学技術を理解した人でないと,これからのイノベーションは起こせません。私は,日本はもう少し理系的なものの考え方も導入するべきだと思います。特に政治家はするべきです。
 理系で学んでいる学生はそうした素養をもった貴重な人たちですから,自分のやりたいことのために使うのはもちろんですが,外に向けて自信をもって発信していってほしいと思います。政治の世界は文系の素養に富む人が多く,ストーリーテラーは情感に訴えますが,一方で枝葉の話や対処療法に陥る恐れがあると感じています。理系の研究では,現象を構造的にとらえ,枝葉に気を配ると同時に太い幹も同時に意識して課題解決を図ります。例えば貧困問題でもセーフティネットの充実と同時に,貧困の発生の起源にあたるような抜本的な解決,例えば教育機会の均等を早期に実現するべきなのです。
 加えて,製品開発の経験から述べたように,社会で大きな仕事をしようとすると,たくさんの人たちを巻き込んだプロジェクトになります。つまり,組織をまとめ上げていく力が必要です。そういう意味では,学生のうちから部活動でもサークル活動でも何でもいいので,他人を巻き込んだり異なる考えの人と交渉したり合意形成する経験をどんどんしておくといいと思います。
 裸眼3D液晶テレビの開発と一緒に育った娘は現在大学生なのですが,オンラインで出された課題の数字に誤りがあったことがありました。娘はそれに気づいたのですが先生の意図するところがわかったので,間違いを正した解釈のもと問題を解いて提出したのだそうです。しかし,ある学生が数字が間違っていることを先生に伝えたらしく,それを受けて先生は,間違っていると連絡してきた人たちを満点にするという対応をされました。それをひどいと言う娘に対し私は,間違いに気づいていたけれど意図を解釈してやったということを先生は知らないわけだから,先生と交渉してみてはどうかと伝えました。小さなことですが,他人と交渉したり折衝をしなくてはいけないシチュエーションはこれからもたくさんあります。失敗が許される学生のうちに意識的にいろいろ経験してみるといいのではないでしょうか。
福島 りえこ

福島 りえこ(ふくしま・りえこ)

1995年 東北大学大学院理学研究科修了 1995年 (株)東芝入社 研究開発センター配属 2017年 都民ファーストの会の公認で都議会議員選挙に世田谷区から出馬 トップ当選 2021年 再びトップ当選
●専門分野
裸眼3D液晶ディスプレイ
●主な受賞歴
2005年 第57回神奈川県発明考案展覧会/川崎市長賞
2005年 日本光学会/光設計優秀賞
2007年 映像情報メディア学会/技術振興賞 開発賞
2010年 発明協会/全国発明表彰21世紀発明賞(第二表彰区分)
2010年 映像メディア学会/丹羽高柳賞(業績賞)
2010年 ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011/大賞
2011年 文部科学大臣表彰/科学技術賞(研究部門)
2011年 Women and the Economy Summit(APEC USA 2011)/APEC女性イノベーター賞
2013年 日本液晶学会賞/業績賞(開発部門)

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