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ものづくりの才能は実践により培われる三鷹光器(株) 中村 義一

月を使った距離計測

中村会長:話はちょっと戻りますが,天文台で働いていた当時,掩蔽(えんぺい)観測というものをやりました。星と月を利用して距離を測る方法です。月とほかの星の速さは違いますから,星をじっと見ているとその脇を月が突っ切ります。例えば北海道である星をじっと見ていて月が突っ切る,その瞬間,同じ星を見ていても,九州のほうはまだ全然月が来ていない。1時間後くらいに「今,突っ切りました」となるわけですが,その時間のズレによって,北海道にある望遠鏡を設置した場所と九州に設置した場所の距離が正確に測れるのです。これは天体捜索部の広瀬秀雄先生が考えました。この方法を使えば,地球の円周が1mの誤差で測れますが,その装置を作るとなると大変です。しかし,「私が作ります」といって一生懸命やって,一応正確に測れるように作りました。こういうことの応用を,皆さんが何に使っているかというと,GPSです。人工衛星は今無数に飛んでいるから,あの頃もうちょっと勉強してGPSのいいものを作ったら面白い会社になったのかなと思います。

1ナノを測る非接触三次元測定器の秘密

中村会長:偏光性観測もしましたね。偏光性観測というのは,明るくなったり暗くなったりと瞬いている星を正確に計ることです。星は温度変化をしているから色も変わっているわけです。そういうことをきちんと測ろう,ということです。これを応用しているのが,うちの三次元測定器ですね。オートフォーカスで1ナノまで測定できるもので,世界特許を抑えてあります。「焦点が合ったところに大きな信号が出ます,大きな信号が出たところを読めば1ナノが測れます」というふうにカタログなどでは光軸ですべて説明はしてありますが,実はそれだけではこの測定器を正確に説明したことになりません。この装置では光軸以外に光束も使って測っています。天体観測では,星の明るさを測る場合は光束を使うのです。

聞き手:光束を使うというのは,光の量ということですか?

中村会長:ええ。レンズの光軸と光束で焦点を導いています。要するに焦点を合わせるものを2つ持っているということです。ただ,特許申請は光軸だけで説明して図面を出したから,日本の大手企業さんはそれをまねして作って「ちっとも出ない」「あれはウソだ」と言ってます(笑)。

聞き手:この話は掲載しても大丈夫なのでしょうか(笑)?

中村会長:2つめがあることは今まで口にしていませんでしたが,言わなくてもそのうちに分かるものだと思いますけどね。これは当たり前のことなんです。やらなければいけないことなんだけど,大学の先生たちは光軸計算だけをやるから失敗が多いんです。
 偏光性観測というのは,古畑正秋先生が考えたものです。世界で5本の指にはいる先生だと思います。広瀬先生も古畑先生も天文台長になりました。私たちは,そういう先生と一緒に観測装置を作っていましたから,ゆっくりと共に研究ができたわけで,それの成果が製品にいろいろと導入されているわけです。
 うちがよそのメーカーと違うのは,実際に第一線でやっている先生たちに来ていただいて教えてもらえるところです。その代わり,観測装置を作ってあげるということをやります。天文の機械を民間のほうに置き換えるとこういうものができますよ,というような感じでやっていますから,うちの会社は次々といろいろなロマンがわいてくる。皆さんも少し天文の勉強をしてみると,いろいろなアイデアが出ますよ。

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