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第29回 パリとニューヨーク

6人6様


 この度の展覧会は,フランスのホログラフィーファンデーションからアートグラントを授与された6人のアーティストが制作した作品展,IRIDESCENCE(図4)で,会場は1区のサントノーレ通りから少し入ったパリのド真ん中に位置する画廊(図5)であった。画廊の前で集合記念撮影(図6)をした。5人なので,正確にはマイナス1名。筆者は新作「自然のかけら」(図7)のほか,主催者の要望で既成作品(図8)も展示した。ガラスにラミネートしたこの新作はレインボータイプであるが,バックにミラーを重ねて反射タイプとして展示する。図9はFred Unterseher(アメリカ)のDCG(重クロム酸ゼラチン)の透過型ホログラムである。DCGは非常に明るい(回折効率の高い)感材であることがよく分かる。Fredはアーティストであり,よい指導者でもあった。1980年初頭に「Holography Handbook―Making Holograms the Easy Way」を出版している。高価な実験装置でなくても誰でも準備できる撮影装置でのホログラム製作を紹介している。この本を参考にして,多くのアマチュアホログラファーが誕生したと思われる。このとき彼は体調がすぐれずパリに集まれなかったが,これが彼の生涯最後の作品となってしまったことを知ったのは昨年(2021)のことである。
Michael Bleyenberg(ドイツ)の作品は3次元情報を消して平面に色彩の変化を見せるホログラムである(図10)。Patrick Boyd(イギリス)は連続した風景写真からインテグラルホログラムを制作する。従来の銀塩感光材料ではなくDCGの透過型を初めて制作した(図11)。Pascal Gauchet(フランス)はホログラムを組み込んだ立体のオブジェとして仕上げ(図12),Lana Briscella(アメリカ)の作品はプリントされたデジタルホログラムである(図13)。このように,技術もコンセプトもまったく異なる6人展である。また,オープニングでは実に懐かしい面々と出会うことができた(図14,図15)。サンパウロの展覧会で一緒に招待された写真家夫妻とは20年ぶりの再会を果たした。昔Pascalの家に遊びに行ったときに出会った2歳くらいの人形のようにかわいい坊やが,身長2メートル近い髭面の大男に変貌していたのには驚嘆した。外が黄昏れるころ,室内に展示されたホログラムは一段と映える(図16)。 <次ページへ続く>

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OplusE 2022年9・10月号(第487号)

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