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第28回 香港と深圳の旅

お困りごと


 この時発表された講演会のフルプレゼンテーションは動画として記録され,英国のRiver Vally TVがパブリッシャーとなって2012年にインターターネット上に公開された。2006年のISDHではじめて講演が動画記録されネット配信されたが,両講演録は現在,誰でも自由にアクセスすることができる。
 TIB AV-Portal(ドイツ国立科学技術図書館(TIB)が運営する科学技術動画提供のためのポータルサイト)でISDH 2009あるいはISHII Setsukoで検索すると,深圳での発表動画が出てくる。しかし,アルファベット名での検索は同姓同名の別人のデータも出てくるので要注意である。
 ところで,インターネット上における翻訳機能はこの数年かなり向上している。オリジナル言語から日本語への変換も以前に比べ,日進月歩でかなり文章的にも読みやすくなってきている印象だ。ところが翻訳機能が簡単に使えるようになる一方,非常に困ったことが発生している。オリジナルが英文で日本語への翻訳の時,日本人名の漢字が最も一般的に使われている文字に勝手にあてはめて変換してしまうことである。実は以前から非常に気になっていたのだが,ネット上で筆者のISHII Setsuko関連の英文記事を自動翻訳にかけると,名前がすべて「石井節子」と変換されてくる。これは誰だ! 正しくは「勢津子」なので,日本語版では筆者とは別人となってしまっている! ちなみに海外でアップされた筆者関連の記事の翻訳名はすべて別人の「石井節子」となって出てくる。実に不愉快旋盤,非常に困っているのである。アルファベットでの同姓同名は多数存在する。検索ではそれらが混在して現れてくることは周知である。情報を取る側が最新の注意を払えばすむだけのことだ。ところが日本人の名前の漢字表記は誤って翻訳されると,明らかに別人を意味することになってしまう。受け取る側には判断をする手立てがないのである(今,この「節子」と「勢津子」にこだわる文章を英語に自動翻訳するとどのような英文になるのであろうかとふと考えたら可笑しさがこみあげてきた。)。
 現在人名に関しての日本語翻訳には“ひらがな”“カタカナ”変換を基準とすることはできないものだろうか? 表音表記であれば同姓同名の区別はできないにしても(英文上と同じ条件であって),誤った漢字に変換されて別人を意味するよりはるかに良い。漢字で別名表記になってしまうのは由々しき事態である。勝手な名前の当て字漢字表記はなんとかならないものか。きっと筆者同様に,名前の自動翻訳で迷惑をこうむって困っている人は多数いるに違いないと確信している。
 この問題はどこにクレームを入れたらよいのか? 現在の対処法をご存じの方はぜひ教えていただきたい。今後自動翻訳機能がもっと改良され,どちらがオリジナルかわからないくらいスムーズに変換されて便利になればなるほど,ますます誤ったいい加減な情報も拡散することになるのである。翻訳機能に,文章内容から総合的な処理が施されて,人名漢字翻訳については細心の注意が払われる情報処理機能が付加されるような技術開発はできないものだろうか。さほど難しいこととは思えない。ぜひ実現してもらいたいものである。
 新しい技術が開発されると,これまでになかった新たな問題も発生する。それらを順次クリアしてきたのが技術の歴史であり,われわれ人類の性なのであるから。

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