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ライバルとなる友を作ろう名古屋大学 産学官連携コーディネーター 虎澤 研示

ライバルとなる良き友を持て

聞き手:大学では学生に講義をなさる場合もあるのですか?

虎澤:ええ。名工大の時には,知的財産に関する授業をしていました。現在も非常勤講師をしていますが。工業大学ですから,そうしたニーズがあるのですね。学生は1学年で1,000人弱いるのですが,その半分ぐらいが講義を受けていました。現在も,前期,後期で講義が2本ずつ走っています。

聞き手:学生のあいだで知的財産に対する意識は高まっているのでしょうか?

虎澤:はい,かなり高まったと思います。名工大は工業大学ですからほとんどの学生がエンジニア希望で,知財に関する意識は高いといえます。わたし自身は企業出身者ですので,知的財産がなぜエンジニアにとって大切かとか,企業はこんなふうにやっているという解説をするのが自分自身のコアコンピタンスといえます。ですから,そういう話を積極的にするようにして学生に興味をわかせるようにしています。就活の時期の学生などは,企業がどんな組織でどんなことをやっているかという話をすると,寝ていた学生もパッと目を覚ましたりしますしね(笑)。

聞き手:そういう学生の方たちに,何か伝えておきたいことはありますか?

虎澤:学生だけじゃなく,企業在籍中,若い人たちによく言っていたのは,まず「専門分野で一流にならんといかん」ということです。その上で「世界各地にライバルとなれる友達を作りなさい」ということ。そして三つ目は,「文化,教養を身に付けることが大切ですよ」ということです。
 振り返ってみると,社外の友達というのは非常にいいものなんですね。お互いライバルメーカーでライバルのエンジニアでありながら,仲の良い友人を社外に多く持てたのは非常に恵まれていたと思っています。光ディスクの規格化に関係した委員会や会議のアフターファイブに,各社の方と交流を深めたことは非常にありがたかった話です。利害で結びついた関係は長続きしないものです。会社の中だけの関係もそうですね。そして,互いの企業秘密に触れることなく社外の友達と上手につき合うためには,文化・教養を身に付けることが必須となりますね。

聞き手:「世界各地に友達を」というお話ですが,語学に関してご意見はありますでしょうか?

虎澤:これからの人には本当に必要ですね。わたしも「英語はできるけど英会話は苦手」というやつですから(笑)。

聞き手:最近ではインターネットの発達によって,リアルタイムで海外の友人とコミュニケーションを取れる時代になりました。そうした仕組みもプラスに働きますね。

虎澤:それは絶対にプラスになりますね。いろいろなかたちで海外情報が入ってきますから,それを積極的に吸収できるのは非常に恵まれた環境ではないかと思います。わたしたちが若い時は,英会話を学ぼうと思っても外国人が周りにいなかったですから。ところが今ですと,どこにでも外国語学校があり外国人の先生がいて,いつでも学ぼうと思えば学べる。さらにインターネットが発達してきたので,吸収できるチャンスがいっぱいありますから,若い人は積極的に学んでいかないといけませんね。
虎澤 研示(とらざわ・けんじ)

虎澤 研示(とらざわ・けんじ)

1971年,京都大学 理学部卒業。同年,三洋電機?に入社して技術本部開発研究所に配属。1988年,同社 研究開発本部情報通信システム研究所 光技術研究部光記録材料研究室室長。1994年,名古屋大学において博士号取得。1997年,三洋電機 研究開発本部ハイパーメディア研究所 記録メディア研究部部長。1999年,同研究所所長。2004年,三洋電機を退職。同年,名古屋工業大学 テクノイノベーションセンター インキュベーション施設教授。2007年,同大学大学院工学研究科 産学官連携センター知財活用部門グループリーダー兼教授。2011年,同大学退職。同年,名古屋大学 産学官連携推進本部連携推進部 産学官連携コーディネーター(非常勤)。現在に至る。日本応用磁気学会論文賞,日本金属学会技術開発賞,日本貿易振興会感謝状(海外留学生受け入れによる国際貢献)を受賞。

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