セミナーレポート
誰にでも分かる,サービス現場でのユーザー特性の画像センシング技術 ~ユーザーの体形,運動,行動センシング~産業技術総合研究所 持丸 正明
本記事は、画像センシング展2011にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
歩行コーチングや販売につなげる
この手法を市場に持ち込んだ最初のケースは,コナミと共同開発したトレッドミルのシステムです(図11)。トレッドミルの下にはロードセルが置いてあり,歩いた時の力が測れます。この力のデータから,動きと関節にかかる力を復元します。これは,歩行データベースを持っているから可能なのです。この測定結果に基づいて,足にかかる負担や歩き方の美しさ,転倒リスクを評価します。図12に示した太い線がトレッドミルのデータから推定したもので,細い線が実際に測ったものです。これだけ,動きもトルクもちゃんと推定できることが分かります。一部ズレている部分がありますが,これは「遊脚期」といい,足が空中にある時に反対側の足からたどって動きや負荷を推定しているので,精度が良くないことが理由です。
図11 トレッドミル歩行評価システム(青木ほか,バイオメカニズム学会 2009)

図12 歩行の推定結果(被験者:31歳,1.76m,57.0~)

図13 歩行主成分得点による介入実験の評価(被験者:36歳,1.66m,65kg)
こうしたサービスに至る最初の計測は,力の計測でなくてもかまいません。先ほどのデータベースの中のどこかを測ればいいのですから,例えばビジョン計測によって動きを測って力を推定することもできます。あるいは,体の一部の加速度が分かれば,そこから残りの動きと力を推定することもできます。われわれのところに来たある大手量販店の方は,お客さんの体に何かをつけるのは現実的ではないし,このようなトレッドミルを売り場に置くのも難しいので,通路を歩く姿を側方からカメラで撮って何かできないかと言ってきました。これはビジョンの出番ですね。また,日常的にお客さんがどう歩いているかを知りたいと言うならば,携帯電話や時計に組み込まれた加速度計を身に付けてもらって,そのデータから推計するのが現実的かもしれません。サービスに応じた切り口でセンシングの手段を変えてトラッキングすることで,いろいろな歩容のパターンやその変化パターンを知ることができるようになるのです。
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産業技術総合研究所 持丸 正明