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研究室探訪vol. 24 [福井大学 橘研究室]橘 拓至 教授

あの研究室はどんな研究をしているのだろう? そんな疑問に答える“研究室探訪”。
今回は,福井大学 橘研究室にお伺いしました。

次世代ネットワークシステムの構築

 橘研究室では,次世代ネットワークシステムの構築に貢献する研究を行っている。インターネットをはじめとしたネットワーク技術は私たちの生活に深く根づき,生活には欠かせないものとなっている。そして,ネットワークサービスの多様化やITインフラを整備する地域の拡大がますます進むことから,このようなネットワークの発展に必要な技術が求められてきている。そのなかで,橘研究室は災害・故障に強い安心・安全な次世代ネットワークシステムの構築を中心とした,ネットワーク技術の研究に取り組んでいる。
橘 拓至 教授
2004年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報システム学専攻 博士後期課程修了 博士(工学) 2004年 独立行政法人 情報通信研究機構 情報通信部門 超高速フォトニックネットワークG 専攻研究員 2006年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報システム学専攻 応用システム講座 助手 2007年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報システム学専攻 応用システム講座 助教 2009年 University of California, Berkeley (UC Berkeley), Electrical Engineering and Computer Sciences, Visiting Scholar 2011年 福井大学大学院 工学研究科 情報・メディア工学専攻 准教授 2019年 福井大学大学院 工学研究科 情報・メディア工学専攻 教授

[研究テーマ1]オープンソース言語によるサービス保証型ネットワークスライシング

 5Gの特長である大容量ブロードバンド,大量セッション接続,超低遅延高品質などを活用したさまざまな新しいサービスを実現するために,これらの要求に対して迅速かつ柔軟にネットワークを提供することが課題となっている。ネットワークスライシング技術は共通の物理基盤上にネットワークスライスと呼ばれる要件の異なる仮想ネットワークを複数同時に構築・運用する技術である。物理的な設備を仮想的に分割可能な資源として管理し,それらを自在に組み合わせて必要な仮想ネットワークを構築することで,5G時代のネットワークを支える技術として期待されている。
 研究室ではサービス保証型ネットワークスライシングに適用可能な高速障害復旧技術を提案し,この技術を適用した高信頼・高効率ネットワークスライシングを確立する。さらに,確立した技術を利用可能なデータプレーンおよびコントロールプレーンをオープンソース言語によって開発し,両プレーンが連携したシステムを開発する。開発したシステムの性能は実証実験で評価し,有効性と実用性を調査する。なお本研究は,戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)社会展開指向型研究開発の一環として実施している。

オープンソース言語によるサービス保証型ネットワークスライシングの概要図

[研究テーマ2]MECとクラウドを併用した多人数情共有型アプリに対する動的タスク割当技術の実装

 MEC(Multi-access Edge Cloud)環境において,ユーザー近傍のMECサーバーとクラウドサーバーを併用する多人数情報共有型アプリに対して,MEC環境の状況に応じて両サーバーを柔軟に使用する動的タスク割当技術を実装する。研究室では,本アプリで処理される全タスクを,リアルタイム性を要求するタスクとリアルタイム性を要求しないタスクに分類し,さらに,リアルタイム性の要求するタスクを高優先タスクと低優先タスクに分類する。そして,本技術ではリアルタイム性を要求する低優先タスクを対象に,当該タスクの処理場所をMECサーバーとクラウドサーバーから動的に決定する。この動的タスク割当技術はMECサーバーとアプリに実装し,MECサーバーでは低優先タスクの処理場所を決定して,決定した処理場所を端末に通知する。一方のアプリでは,通知された処理場所の情報に基づいて,低優先タスクの処理場所を変更する。本技術を実装したアプリとサーバーを用いて実機実験を行い,動的タスク割当技術の性能を評価する。実験結果から,動的タスク割当技術によって,低優先タスクの処理場所を適切に決定し,タスクの処理遅延を低減できることを示す。なお本研究は,国立研究開発法人情報通信研究機構の高度通信・放送研究開発委託研究「5G・Beyond 5Gの多様なサービスに対応する有線・無線アクセスネットワークのプラットフォーム技術の研究開発」の一環として実施している。

開発中の多人数情共有型アプリと動的タスク割当技術の効果

[研究テーマ3]ネットワークスライスに対する高効率INTと機械学習を用いた資源調整・障害復旧技術

 ネットワークスライス上で変動の激しい大容量トラヒックを収容するためには,各ネットワークスライスに割り当てられる各種資源(ノードのCPU,メモリ,リンクの帯域など)を利用状況に応じて調整しなければならない。特に,各スライス間で資源を適切に調整するためには,物理網管理者が各スライスの利用状況を確認しながら資源調整しなければならない。また,障害発生時には各スライスに未使用の資源を割り当てて迂回経路を確保する必要があり,迅速な障害復旧のために各ネットワークスライスの利用状況を把握することが望まれる。研究室では確立した技術を利用可能な実験システムを仮想環境および実機で構築し,実証実験によって有効性および利用可能性を調査する。なお本研究は,科研費基盤研究(b)の一環として実施している。

高効率INTと機械学習を用いた資源調整・障害復旧技術の概要

橘研究室より

 ネットワークに関する研究を中心に,学会発表や学術論文などの学外活動も積極的に行っています。このような研究活動を通して,問題解決能力やプレゼンテーション力を身につけることができます。

橘 拓至 教授

福井大学 橘研究室

住所:〒910-8507 福井県福井市文京3丁目9番1号
   福井大学文京キャンパス 工学部3号館 4階(3-402)
   TEL:0776-27-9971 FAX:0776-27-8751
E-mail:takuji-t@u-fukui.ac.jp
URL:http://ginyu.fuis.u-fukui.ac.jp/

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