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研究室探訪vol. 22 [成蹊大学 知的インターフェース研究室]中野 有紀子 教授,坂戸 達陽 助教

あの研究室はどんな研究をしているのだろう? そんな疑問に答える“研究室探訪”。
今回は,成蹊大学 知的インターフェース研究室にお伺いしました。

人とコンピュータとの自然なコミュニケーションを目指して

 対面コミュニケーションでは,言葉だけでなく,音声の韻律,表情,視線,ジェスチャ等の非言語情報が会話参加者間で互いにやり取りされる。意味を伝えるのは主に言語情報であるが,非言語情報はそれを円滑,かつ正確に伝える重要な役割をもつ。このような,会話中の言語・非言語情報を解釈する人間の社会的知性の計算モデルを構築し,それを実現する人工知能の研究を行っている。
中野 有紀子 教授
1990年 東京大学大学院教育学研究科修士課程修了 同年 日本電信電話(株)入社 2002年 MIT Media Arts & Sciences修士課程修了 同年より JST社会技術研究開発センター専門研究員,東京農工大学大学院工学府特任准教授,成蹊大学理工学部情報科学科准教授を経て,現在,成蹊大学理工学部情報科学科教授 知的で自然なユーザインタフェースの実現に向けて,人との言語・非言語コミュニケーションが可能な会話エージェントの研究に従事
坂戸 達陽 助教
2016年 京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 博士後期課程 設計工学専攻修了 国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 特任研究員を経て,現在,成蹊大学 理工学部 情報科学科助教
人と自然なインタラクションを行うことができる,知的で自律的なエージェントの実現に向けて,マルチモーダルな情報から能動的に知識を獲得するエージェントの研究に従事

[研究テーマ1]社会的信号から重要発言の推定をする

 グループ議論を議事録としてまとめることは,グループメンバー間の知識共有に役立つ。しかしその作成には手間や経験を要し,議論に参加しながら要点をまとめる作業は認知的な負荷も大きい。このような問題を解決する技術として,議論の要点を抽出して要約を作成する自動要約技術は有用である。
 多くの文章要約研究で採用されているアプローチに,重要文を抽出し,これらを集めることにより要約を生成する,抽出型要約(Extractive Summarization)といわれる方法がある。議論要約の研究でもこれにならい,議論中の重要な発言を推定することが主要課題となっている。
 研究室では,言語情報と非言語情報を深層学習によりフュージョンさせて高性能な重要発言推定モデルを提案するとともに,得られたフュージョンモデルの特性や性能向上の要因を調査する。まず,言語情報モデルと非言語情報モデルをそれぞれ作成する。次に,両者をフュージョンさせたモデルを作成し,言語,非言語,言語・非言語フュージョンの3種類のモデルの推定性能を比較する。さらに,畳み込みニューラルネットワークを用いて,グループ議論における重要発言の推定モデルを提案した。将来的には,手作業を一切要さない自動要約生成を目指す。


グループ議論



議論ブラウザ_mozaic


[研究テーマ2]韻律情報と視覚情報に基づく傾聴エージェントシステムの開発

 現在わが国では認知症高齢者の数の増加に伴い介護者が不足している。この状況改善を目的とする研究・開発の1つとして,患者の状態を把握・記録し,介護者や家族に通知を行う見守りサービスがあり,一人暮らしの認知症高齢者やその家族に向けたサービスとして必要性が高まると考えられる。
 そのため,研究室では,認知症高齢者の日々の健康状態・心理状態・認知状態の把握を目指し,在宅で患者の体調等について尋ねることにより話の聞き役にもなる傾聴エージェントの開発を進めている。これまでに,高齢者が問いかけに対して,テンポよく,リズムよく,また積極的に応答しているか否かを会話活動評価値と定義し,この会話活動評価値を韻律情報,頭部動作情報,表情の情報から自動的に判定する技術を開発した。さらに,応用技術として,構築モデルをレポートシステムに実装し,家族や介護者に高齢者の様子を伝えるためのシステムの研究をしている。今後は推定モデルの向上のため,改善して精度をあげていく。


傾聴エージェント


[研究テーマ3]コミュニケーションを支援するロボット

 近年,人型ロボットが広く認知され始め,店頭や窓口等で見かける機会が増えている。今後,より身近なものとなり,われわれの生活により深く関わることになると予想されるが,人と共生するロボットを実現するには,人同士の会話に参入できるコミュニケーション機能が必須となる。
 そこで,研究室では,多人数会話に円滑に参加し,会話介入を行う全自動会話ロボットの実現を目標に,人同士の多人数会話におけるコミュニケーションを,優位性,参与役割,注視行動,発話権交代といった視点から分析,モデル化し,それを実装した会話介入システムを提案した。
 将来的に,提案システムが人同士の会話に影響を与え,その制御を十分に行うことが可能になれば,介入ロボットは多人数会話に参加できるだけでなく,議論のファシリテーションシステムとして応用できる。人間らしいふるまいで会話に介入するロボットは議論に溶け込みながら,情報提供だけでなく議論の流れをコントロールし,質の高い議論へと参加者を導くような役割を担うことになるだろう。


会話介入ロボット

知的インターフェース研究室より

 研究室では,これまでに,会話中の行動データを計測し,それを機械学習に適用することにより,会話への参加態度や会話スキル,重要発言を推定する技術を開発してきました。さらに,社会的知性の計算モデルを搭載し,言語と非言語情報を解釈・表出しながら,人と会話ができるロボットやアニメーションエージェントの開発にも取り組んでいます。これらの技術開発を通して,人に寄り添い,人の手助けとなる人工知能を実現したいと考えています。

中野 有紀子 教授

成蹊大学 知的インターフェース研究室

住所:〒180-8633 東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1
   成蹊大学理工学部情報科学科 12号館5階2506室
E-mail:y.nakano@st.seikei.ac.jp
URL:http://iui.ci.seikei.ac.jp/

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