研究室探訪vol. 16 [宇都宮大学 大谷・ヘーガン研究室]大谷 幸利 教授,ネイザン・ヘーガン 助教
あの研究室はどんな研究をしているのだろう? そんな疑問に答える“研究室探訪”。
今回は,宇都宮大学 大谷・ヘーガン研究室にお伺いしました。
図4は,メダカを左右前後に動かしながら全体にわたってデータを取ることでメダカ全体の位相画像を取得したものである。卵から孵ってから3~4日後のメダカである。倍率は20倍(NA=0.45),ASは半分である。これにより,メダカの口,ひれ,心臓,尻尾の動きを同時に観察できる。
今回は,宇都宮大学 大谷・ヘーガン研究室にお伺いしました。
オプティクス教育研究センターを中心とした光工学の教育
大谷・ヘーガン研究室は,「偏光工学」と「オプトメカトロニクス」「赤外線工学」「分光イメージング」の研究分野を柱としている。ストークス・パラメータ,ミュラー行列計測,また,これを応用した偏光ナノ計測を中心として偏光工学と光駆動アクチュエータや光駆動マニピュレータ,非接触三次元形状計測,赤外線イメージングやスナップショット2次元分光イメージングを中心としたオプトメカトロニクスに関する研究を進めている。大谷 幸利 教授
1987年 東京農工大学修士課程修了 HOYA株式会社を経て,1991年 東京農工大学工学部助手 1999年 東京大学 博士(工学)取得 2005~2006年 アリゾナ大学オプティカルサイエンスセンター客員教授 1999年 東京農工大学助教授(現,准教授)を経て,2010年 宇都宮大学オプティクス教育研究センター教授,2019年よりオプティクス教育研究センター副センター長
1987年 東京農工大学修士課程修了 HOYA株式会社を経て,1991年 東京農工大学工学部助手 1999年 東京大学 博士(工学)取得 2005~2006年 アリゾナ大学オプティカルサイエンスセンター客員教授 1999年 東京農工大学助教授(現,准教授)を経て,2010年 宇都宮大学オプティクス教育研究センター教授,2019年よりオプティクス教育研究センター副センター長
ネイザン・ヘーガン 助教
2007年 アリゾナ大学大学院博士課程修了 2007~2009年 デューク大学 研究員 2009~2011年 ライス大学 研究員 2011~2016年 Rebellion Photonics 社 2016年~ 宇都宮大学オプティクス教育研究センター助教
2007年 アリゾナ大学大学院博士課程修了 2007~2009年 デューク大学 研究員 2009~2011年 ライス大学 研究員 2011~2016年 Rebellion Photonics 社 2016年~ 宇都宮大学オプティクス教育研究センター助教
[研究テーマ1]フルストークス偏光カメラによる木陰にある水たまりの明確化
近年,カメラの画素ごとに4つの方位の異なるマイクロ偏光子を取り付けた偏光カメラの新しい参入もあり,画像処理業界を中心に注目されている。研究室では,偏光カメラを用いて偏光や複折の高速現象を捉えることを試みてきた。これは,フォトニック結晶製ピクセル偏光子を高速撮像素子に取り付けることによって,衝撃時の応力分布,高分子材料の延伸過程における動的圧力分布を複屈折から捉えることが可能となった。この偏光カメラを用いることでリアルタイムの干渉計やホログラムにおいて動的イメージングが可能となった。図1のフルストークス偏光カメラにより,道路上にある水たまりの偏光状態を計測した。図2(a)~(c)に道路上の偏光成分を抽出したストークス・パラメータを用いた偏光画像結果を示す。図2(a)の光強度分布では影と水にしみた道路の部分の違いの区別は困難である。図2(b)の偏光度では水たまりや水にしみているところが乾いている道路に比べて高く出ており,影と水にしみた部分の区別は容易にできる。図2(c)に偏光度0.2以下の部分はすべて0にしたときの偏光方位を示している。この偏光方位は水たまりの水面のフレネル反射の影響を受けていることがわかる。[研究テーマ2]偏光カメラを用いた微分顕微鏡によるメダカのリアルタイム位相計測結果
生物学や医学では,生物の細胞などの無色透明な微小サンプルが観察されている。蛍光タンパク質を発現させ可視化する方法が多く用いられているが,遺伝子組換えの前処理に時間を要し,検出に蛍光顕微鏡が必要となる。これに対して,図3のように微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡ではシアリング干渉による位相勾配を観察するためサンプルを非侵襲,無染色で観察可能である。DIC顕微鏡に偏光カメラを用いることで,リアルタイムで位相分布の定量化が可能となる。図4は,メダカを左右前後に動かしながら全体にわたってデータを取ることでメダカ全体の位相画像を取得したものである。卵から孵ってから3~4日後のメダカである。倍率は20倍(NA=0.45),ASは半分である。これにより,メダカの口,ひれ,心臓,尻尾の動きを同時に観察できる。
図3 |
図4 |
[研究テーマ3]スナップショット赤外線分光イメージングによるガス検出とその定量化
石油・ガス産業におけるガス漏れの検出は,工業施設での爆発の防止と,掘削,輸送,処理現場でのガス排出を検査する必要がある。赤外線カメラは,これらの課題のガス漏れの検出の標準的なツールとなっている。しかしながら,正確な定量化は困難であり,実際に使用する際には人間の判断が必要である。近年,図5に示すようにガス漏れおよび排出量の定量化を自動的に監視できるスナップショット赤外線分光イメージャが初めて提案されている。 赤外線ガスイメージングは近年普及しているが,正確に定量化して実用レベルに到達したばかりである。スナップショット分光イメージングはGCIカメラの使用により,異なるガスを同時に感知すること,リモートでサイズ,濃度,流量を定量化することができる。スペクトルを利用して化学物質を区別でき,水蒸気や移動物体など誤検出を取り除くことができ,このカメラ1台ですべての監視が可能になった。
図5
大谷・ヘーガン研究室より
2019年4月から,日本初の唯一の「光工学」における修士の学位,2021年より博士(光工学)が取得できるようになる。光学に関する高度な知識・技術を修得して,実践的な技術者・研究者としての能力を有し,広く世界の光学技術の創造・発展をリードして,持続可能な豊かな地域社会の創生に貢献する人材を育成する。宇都宮大学 大谷・ヘーガン研究室
住所:〒321-8585 栃木県宇都宮市陽東7-1-2
宇都宮大学
光工学プログラム/ オプティクス教育研究センター
TEL/FAX:028-689-7136
E-mail:otani@cc.utsunomiya-u.ac.jp(大谷)
nh@hagenlab.org(ヘーガン)
URL:http://www.otanilab.org/