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研究室探訪vol. 15 [千葉大学 津村研究室]津村 徳道 准教授

あの研究室はどんな研究をしているのだろう? そんな疑問に答える“研究室探訪”。
今回は,千葉大学 津村研究室にお伺いしました。

CG,画像を主とする超高次元情報解析・記録・再現とその応用

 津村研究室は,CG,画像を主とする超高次元情報解析・記録・再現とその応用を実現することを目指している。実学に重きを置き,企業との積極的な共同研究や特許化を重視しながら,3つのグループ(質感,情動,肌・医工学)の研究を行っている。千葉大学の特色である画像系の強みである写真や印刷に対する画質評価(主観評価と機能的画像処理)の基礎研究の上に,心理物理(主観評価)や応用物理(機能的画像処理)を基盤とし,情動工学の分野においても強い新規性や独自性に基づき,研究を遂行している。
津村 徳道 准教授
1995年 大阪大学大学院博士後期課程了(博士(工学)) 2002年 千葉大学准教授 1999年3月~2000年1月 ロチェスター大学客員研究員
質感工学,情動工学,情報画像工学に従事

[研究テーマ1]ディスプレイに依存しない等粒状感再現モデルの提案

 携帯端末を用いたARシステムでは,カメラの位置とユーザーの視点位置が異なるため,画面に映るシーンが現実とは位置や大きさが異なって表示されるという問題がある。
 近年,高レベルな色再現が可能となっているため,色彩だけでなく,光沢や透明感,粒状感に代表されるような「質感」のコントロールに目を向けて研究を行っている。オンラインショッピングなどの電子商取引において,CGでの商品紹介では,いかなるディスプレイでも正しい質感のCG再現が必要となるが,ディスプレイによって最大輝度や色再現域などの特性が異なるため,CG画像の見え方が変化してしまう問題が生じる。そこで,変化する質感のうち,物体表面のざらざら感などを表す粒状感に注目し,粒状感に影響を与える要素を用いて粒状感を定量化することでディスプレイに依存しない等粒状感再現モデルの提案を目的とした研究を行っている。粒状オブジェクトのパラメータとしては,粒のサイズ,凹凸の彫りの深さを表す振幅,画像の最大輝度値をそれぞれ3段階で変化させる。粒のサイズと振幅の変化には,ガウシアンノイズによる輝度値の細かい変動があるテクスチャを,画像処理により模様を変更し,それをオブジェクトにバンプマッピングして実現している。本研究によるモデル式が高精度に粒状感を再現できるものであることが示され,今後,より複雑な形状の粒状オブジェクトや様々な粒状パターンの再現が考えられている。


図1 等しい粒状感Gを知覚する等粒状曲面


[研究テーマ2]非接触にて取得した脈波から心拍変動を解析し情動を推定

 情動グループでは,生体情報と人間の情動の強い結びつきを利用し,動画像に対して画像処理や信号処理を行う事により非接触での情動推定を研究している。カメラを用いた脈拍測定は,心臓の拍動によって生じる顔色の僅かな変化を抽出する事で,顔動画像から被験者に触れることなく脈波を推定する手法である。当グループでは,RGBカメラにより撮影した顔動画像に対して色素成分分離を適用し,取得されたヘモグロビン成分動画像の画素値の変化から脈波を推定する(図2)。この手法は,RGB顔動画像をメラニン成分,ヘモグロビン成分,陰影成分に分離することから,照明の変動に対してロバストに脈波推定を行うことができる。このように非接触にて取得した脈波から心拍変動を解析することにより,ストレスをはじめとする情動の推定へと応用する手法について研究を行っている。この研究は広告の効果推定のみならず,労働環境におけるストレスや運転中のドライバーのモニタリング,ロボットの感情認識など,様々な方面から注目を集めている。


図2 色素成分分離を用いた脈波検出


[研究テーマ3]浮腫の体積を測定し,形状の変化を可視化

 医工学グループは,画像処理と計測を始めとした工学分野の医学応用を目的に,現役の医師と頻繁にコンタクトを交わすことで,より高い専門性に基づいた研究に取り組んでいる。研究の一例として,浮腫の形状の変化を視覚的に観察することのできるシステムを開発した。Microsoft Kinect V1という深度カメラを用いて四肢を撮影し,取得した3Dモデルの位置合わせを行った後,形状の変化量の大きさに応じて色分けすることによって,形状の変化を可視化した。上記により得られた2つのモデルの位置合わせを行い,このときの変化量を可視化することで,図3のような結果が得られる。これにより,浮腫の局所的な変化量を視覚的に確認することが可能となった。現在は撮影時の患者の姿勢によらないモデルの位置合わせの実現や,形状だけでなく肌の色やハリなど多角的な浮腫の評価を可能とするシステムへ発展させ,実用的な四肢体積評価システムを目指している。


図3 色付けによる可視化結果


津村研究室より

 津村研究室が主体となって実施しているプロジェクト「質感・情動イメージングの創成」(2020年度~2022年度)が,千葉大学グローバルプロミネント研究基幹・次世代研究インキュベータとして採択された。同プロジェクトは「質感イメージングの創成」(2017年度~2019年度)の発展的プロジェクトであり,化学系(材料)の強力な研究者と連携し,自己質感変容材料を開発するなど,これまでの写真学科・印刷学科の流れをはるかに超越した独自のイメージング分野を創出する。
http://www.mi.tj.chiba-u.jp/~tsumura/GPHP/

津村 徳道 准教授

千葉大学 津村研究室
住所:〒263-8522 千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33
   環境リモートセンシングセンター横共同棟
TEL: 043-290-3262
FAX: 043-290-3262
E-mail:tsumura@faculty.chiba-u.jp
URL:http://www.mi.tj.chiba-u.jp/

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