セミナーレポート

自動運転のためのセンサーフュージョン技術芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科 教授 伊東 敏夫

本記事は、画像センシング展2022にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

センサー技術の特徴

 自動運転を支える現状のセンサー技術を紹介します。超音波センサーは距離の問題があるため,駐車支援用の周辺障害物検知に利用されています。現在のACCにはたいていミリ波レーダーがついています。電波レーダーは薄い基板を足し合わせていく電子機器なので,搭載には困らない利点があります。1回の計測で自動的に相対速度がわかり重宝していますが,空間解像度が取れない欠点があります。LiDARは,レーザーダイオードのパルスレーザーを計測するのが基本で,量産化されています。Velodyne HDL 64Eでは,レーザーダイオードが64個搭載され,64本のビームを出しています。天候に弱いと言われていますが,空中の雨粒は減衰するくらいでそんなに問題はありません。ただし,高速道路では前の車のスプラッシュという水の跳ね上げにより,水の塊を反射し,車間距離が測れない問題があります。雪の場合も,降る雪の一粒一粒を全部検出してしまいます。
 LiDARの使い方としては,自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)があります。ポイントクラウドのデータを一度作れば,次に走るときは検出しているところをスキャンマッチングすれば済みます。また,LiDARは障害物認識が容易です。交通環境は点群が物体ごとに固まっているので,それをクラスタリング処理し,集めて形を見ると簡単に歩行者などの物体認識ができる特性があります。電波レーダーとLiDARを比較すると,電波ミリ波レーダーは,移動物体は切り分けられますが,静止物は難しく,高速道路のACCにしか使えません。一方,LiDARはポイントクラウドで形自体が見えるので,一般道ではこちらを使うことになります。
 私の研究室では,免許不要で室内も一般道もどこでも走れるシニアカーに着目して研究しています。これにLiDARと全方位カメラを搭載しセットにした自動運転セットボックスで,シニアカーの自動運転化に取り組んでいます。距離はすべてLiDARで検出して,パターンは全方位カメラで検出します。

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芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科 教授 伊東 敏夫

1982年 神戸大学工学部システム工学科卒業,同年ダイハツ工業㈱入社。以来,自動ブレーキを中心としたカーエレクトロニクスの研究開発に従事,2013年 同社を定年退職後,芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科に入職。
運転支援システム研究室を立ち上げ,自動運転用センサー,HMI,車両の研究開発をテーマとする。

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