セミナーレポート

自動運転のためのセンサーフュージョン技術芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科 教授 伊東 敏夫

本記事は、画像センシング展2022にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

フュージョン技術

 複数のセンサー情報の処理過程の総体を工学的に実現するのが,センサーフュージョンの定義です。人間の脳が,触覚や嗅覚,視覚,聴覚が絡み合って記憶を浮かび上がらせるように,複数のセンサーでより豊かな世界を作ります。
 センサーフュージョンの実用化には,次の4つの分類が考えられます。1つめは「複合」です。これは,A+Bの世界です。たくさんのレンジセンサーを組み合わせて,そのレンジをカバーする足し算の使い方です。2つめは「統合」です。これは掛け算です。たくさんのセンサーを使って平均化することで精度を上げます。3つめは「融合」です。A+Bで違う結果を出します。例えば,ステレオ距離計測では,左右の2枚の平面情報から3次元情報といった今までとは違う知覚表現を獲得します。これは非常に高度なセンサーフュージョンとみなせます。4つめは「連合」です。これは人間のやっているような連想記憶のように,センサー情報間の関係を理解する連想的処理過程で,相互の関係を抽出するものです。
 複合,統合,融合,連合の4段階のレベルでセンサーフュージョンを捉えると見る目が変わってきます。例えば,自動車への応用では,レーダーでは見えない割込車の検出をカメラで行うシステムが複合です。レーダーで前方車両を認識しカメラで車線を認識し,前方車両の車線を判断するシステムが統合します。レーダーで距離を計測し,カメラのパターン認識で前方車両を認識するシステムが統合です。そして,相互の関係が記憶と異なっていれば異常と判断するネットワークを用いたシステムが連合です。
 今後の動向としては,レーザーレーダーは復活してくると考えています。センシング性能向上にはフュージョンが有望です。画像処理の多様な処理を活用していくことが望まれます。フュージョン技術に,複合・統合・融合・連合の4つのレベルを取り入れ,統計処理・機械学習化を進めていくことが求められます。さらに,デジタルマップやV2X(Vehicle-to-everything)との融合などが注目されます。

芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科 教授 伊東 敏夫

1982年 神戸大学工学部システム工学科卒業,同年ダイハツ工業㈱入社。以来,自動ブレーキを中心としたカーエレクトロニクスの研究開発に従事,2013年 同社を定年退職後,芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科に入職。
運転支援システム研究室を立ち上げ,自動運転用センサー,HMI,車両の研究開発をテーマとする。

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