セミナーレポート

超高齢化時代におけるみまもり工学 センシング技術への期待東京大学大学院医学系研究科 特任教授 森 武俊

本記事は、画像センシング展2018にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。

日常生活の導線の解析

 日本の人口は現在1億3000万人ですが,2050年には9000万人を切り,2055年には65歳以上の割合が40%前後になると言われています。高齢化が進むと,ある程度のパーセンテージで認知機能や運動機能が低下するのは避けられません。2005年に認知症の人は合計で300万人,2025年には500万人以上になるという数字も出ています。このように,認知機能の下がった人を誰かが支えなくてはいけない時代が来るということです。
 MCI(Mild Cognitive Impairment: 軽度認知障害)という言葉があります。普通の状態より少し認知機能が下がって,生活の支障が出始めている人のことで,80歳以上では半分以上がMCIとなっていきます。これらの人たちに対しては,人口が減少していく中,人手で支えるのは困難で,ロボットで支えることが必要になってくるでしょう。
 私たちが考えているのは,ビッグデータを活用し,生活している状況をセンサーで測り,そこでどんなことが起こっているのかを認識させるものです。生活の中の日々の振る舞いを見ていくと,癖や習慣,リズムがあり,いつも同じような行動をします。そのような行動を予想して支援できないだろうかと,20年前に,研究室の中に小さな部屋を作り,床やベッド,家具に圧力センサーなどを1000個以上配置し,学生に住んでもらう実験を始めました。それぞれのセンサーをPCなどにつなぎ,集約したデータを統合システムに送り,あらかじめ埋め込んでおいたセンサーのデータの組み合わせで行動を推定するというものです。そうすると,一見カメラで撮ったかのようなデータの可視化も可能になります。センサーの場合は,あるものに触れたらそれを行動にマッピングすることで,簡単に認識が行えるという利点があります。しかし,センサーの数を考えると,普通の家庭やオフィスに入れるのは非現実的です。これが,3次元測距センサーやカメラで代替できるようになれば,同じようなアプリケーションが安いコストでできるようになります。しかし,カメラや3次元センサーの導入には,認識技術が難しいのと,現状では社会的なプライバシー侵害感があります。

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東京大学大学院医学系研究科 ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座 特任教授 森 武俊

1995年,東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1995年,東京大学先端科学技術研究センター助手。1998年,同講師。2001年,米国マサチューセッツ工科大学 客員研究員。2002年,東京大学大学院情報学環助教授(准教授)。2010年,東京大学大学院医学系研究科特任准教授。2015年より現職。

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