セミナーレポート

QoLと生体センシング技術オムロンヘルスケア(株) 志賀 利一

本記事は、画像センシング展2015にて開催された招待講演を記事化したものになります。

世界の死亡リスクの断トツ1位は高血圧

 病院などでは診療のためにCTやMRIなどたくさんの医療機器を使います。しかし,1日の中で考えると,たった10分間の話です。家庭ではどうなっているかわからないにも関わらず,病院に来たときの状態だけ見てその人を判定しようとしているというのが今の医療です。家庭用血圧計を開発して40年たちましたが,ようやく2014年に日本高血圧学会が,家庭での血圧を優先して診断するということをガイドラインに決めました。
 身体活動量として,日常生活ができるというADL(日常生活動作)という指標があります。ADLより下に入るとリハビリが必要になります。生まれて20代くらいまでは元気があります。40,50,60代になるとだんだん体力が落ちてきて,あるところでリハビリという状態になります。その幅が大きいのは実は高齢者なのです。80歳で山に登るなど元気が人もいれば,一方で,60代で介護になっている方もいます。60,70,80代で大きく幅が出てきます。その人その人に合わせたことをしなくてはなりません。
 厚労省のデータでは,このままでいけば2055年には人口のピークが80歳になると予想されており,人口は3割減少します。日本は世界が注目する高齢化最先端国です。高齢化率は現在の20%から40%になります。日本全土が今の夕張市と同じになるのです。高齢化で怖いのは要介護ですが,その原因の約半分は脳血管疾患です。いわゆる脳卒中で寝たきりになる状態です。続いて認知症で,この2つへの対応が重要になります。
 医学の中では,血圧という指標が非常に注目されています。九州の博多の近くにある久山町で40年近く住民の健康を追っているコホート研究があります。世界でも有名な研究ですが,脳卒中の発症率は,血圧140~159あたりから一気に増えていくことがわかりました。
 WHOが死亡にとって何がリスクになるかを世界の国で調べたデータでは,断トツの1位が高血圧です。血圧が重要な指標であり,だからこそ家庭用血圧計が世界でここまで普及したのです。

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オムロンヘルスケア(株) 志賀 利一

1982年山口大学工学部電気工学科卒業。1986年北海道大学大学院工学研究科生体工学専攻修士課程修了。同年(株)立石ライフサイエンス研究所,現:オムロンヘルスケア(株)入社。1998年北海道大学大学院工学研究科生体工学専攻博士課程(社会人選抜)修了。博士(工学)。現在:全社の技術戦略立案,技術管理,新技術探索・インキュベーションを担当。 専門分野:生体工学,医用電子工学,近赤外分光学,生体計測工学全般。

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