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高分子ゲルによるソフトな波長可変レーザー物質・材料研究機構*,科学技術振興機構**,筑波大学大学院*** 古海 誓一*,**,***

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 次世代ディスプレイとしてレーザーテレビが注目されている。現在のレーザーテレビは赤緑青の3種の半導体レーザー光源が搭載されているが,レーザー波長を全可視波長で自在にチューニングできるデバイスがあれば,レーザー光源は1つで良くなり,低消費電力や省スペースが見込める。しかしながら,一般的に半導体レーザーの波長を任意にチューニングすることは難しい。
 そこで,筆者は高分子ゲルの柔軟性に着目して,波長可変なレーザー発振に関する研究に取り組んだ。レーザーを発振させるためには光共振器構造が必要になるが,フォトニック結晶の一種である「コロイド結晶」に着目した(図1)。コロイド微粒子は3次元規則配列したコロイド結晶構造をボトムアップ的(自発的)に形成することができる。すなわち,特別な作製装置を必要としない。数百nmの粒径を持った微粒子で作製したコロイド結晶に白色光を当てると,微粒子の大きさ,隣接粒子間隔,材料の屈折率に依存した波長の光を反射し,光のブラッグ反射を目視できる。
 例えば,粒径が120nmのポリスチレン微粒子の水分散液をキャピラリーセルの数百μmの隙間に流動させると,コロイド結晶膜は良配向を示す。コロイド分散液にあらかじめ高分子ハイドロゲル前駆体を加えれば,構造はハイドロゲルで安定化され,良配向で柔軟なコロイド結晶ゲル膜を得ることができる(図2)。レーザー共焦点顕微鏡で観察すると,ポリスチレン微粒子の規則配列構造を確認できる。
 波長可変レーザー発振を達成するために,不揮発性液体であるイオン液体に着目して,永続的に安定化したコロイド結晶ゲル膜を作製した(図3A)。重要なポイントとして,非最密充塡型のコロイド結晶膜を作製することである。上述した手法で作製したコロイド結晶ハイドロゲル膜を蛍光色素のイオン液体溶液に浸漬した後,放置した。そうすると,高分子ハイドロゲルの溶媒である水が蒸発するとともに,蛍光色素とイオン液体がコロイド結晶ゲル膜中に浸透し,乾燥大気中においても高い安定性を示すコロイド結晶ゲル膜を調整することができた。
 高分子ゲルは柔軟性に富んでいるので,コロイド結晶ゲル膜に圧縮応力を加えれば,レーザー発振の波長をチューニングできると考えた。レーザー発振が起こる条件は,発光色素の蛍光バンドとコロイド結晶のブラッグ反射波長が同じ波長範囲で重なり合っていることである。532nmの緑色の光で励起すると,ブラッグ反射バンドの長波長端でレーザー発振を示し,その発光スペクトル幅は0.06nmにも達していた。さらに,機械的圧縮応力を加えると,レーザー発振の波長は655nmから588nmに連続的にシフトした。このレーザー波長変化について顕微発光像を観察してみると,655nmでは赤色,610nmではオレンジ色,588nmでは黄色にレーザーの色変化も確認することができた(図3B)。

参考文献

  1. S. Furumi, T. Kanai, and T. Sawada: “Widely tunable lasing in a colloidal crystal gel film permanently stabilized by an ionic liquid,” Adv. Mater., Vol. 23, No. 33, pp. 3815-3820(2011)
  2. Highlighted in Nature Asia Mater, 2011 年11 月14 日
  3. 日経産業新聞, 2012 年9 月13 日・11 面

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