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海鳥目線で捉えた海洋ゴミ汚染国立極地研究所 西澤 文吾

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 海洋のゴミ問題が年々深刻化しており,海洋生物への影響が懸念されている。海洋ゴミの分布はこれまで,船や航空機からの目視やプランクトンネットを用いた採集によって調べられてきたが,陸地から遠く離れた外洋の状況はよくわかっていなかった。そこで,本研究グループは,外洋を自由に飛び回る海鳥に着目し,ビデオ記録計とGPS記録計を取り付けて,海鳥の目線で海洋ゴミ汚染の実態を解明する取り組みをおこなった1)。
 東京から約580 km南の太平洋に浮かぶ伊豆諸島鳥島において,子育て中のクロアシアホウドリ(図1)にビデオ記録計*(日中の明るい時間帯に3秒間の動画を2分間隔で記録する設定で3~4日分のデータが取得可能(図2))とGPS記録計(2分間隔で位置を記録)を同時に装着し,13羽から8492本の映像データと位置情報を収集,分析した。その結果,13羽中9羽がゴミに遭遇していたことがわかり,海面に浮かぶ発泡スチロールや漁具など計16個のゴミが撮影された(図3, 図4)。ゴミの上空を通過することがあった一方で,ゴミの近くに着水することもあり,中には,プラスチックシートを実際にくちばしでつつく様子も映っていた。ゴミにはフジツボなどの海洋生物が付着していることも多く,見た目やにおいに引き寄せられていると思われた。
 GPSの位置情報からゴミの場所を分析すると,クロアシアホウドリは房総半島付近や東北沖合など広範囲を移動していたが,ゴミは鳥島周辺の海流の緩やかな場所で見つかった。こうした海域では,ゴミの摂食や魚網への絡まりが発生するリスクが潜在的に高いと考えられる。
 映っていたゴミはいずれも数十cm程度の比較的大きいサイズと推定されたが,映像では見えにくい小さなゴミはもっと多い可能性がある。映像解像度の向上だけでなく,被写体(ゴミ)までの距離の推定機能やブレ補正機能をビデオ記録計に搭載することで,5 mm程度のマイクロプラスチックによる汚染状況が明らかになるかもしれない。また,ビデオ記録計の小型・省電力化,夜間も撮影できるように光源を搭載する等の改良をおこなうことも必要だろう。本研究手法が世界中のさまざまな海鳥種に適用され,海洋ゴミ汚染と生物への影響の理解が深まることが期待される。

(脚注)
* DVL400M065-IB, リトルレオナルド社, 61 × 21 × 15 mm, 29 g,動画解像度1280 × 960, 30フレーム/ 秒, 画角(空中):水平43°・鉛直33°,画角(水中):水平31°・鉛直24°, 耐圧400 m

(参考文献)
1)B. Nishizawa, J.-B. Thiebot, F. Sato, N. Tomita, K. Yoda, R. Yamashita, H. Takada, Y. Watanuki: “Mapping marine debris encountered by albatrosses tracked over oceanic waters”, Scientific Reports, Vol. 11, No. 10944(2021)

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