セミナーレポート
精密加工と精密位置決め技術の組み合わせによる材料内部の3次元組織観察,ならびに硬さ分布の3次元解析システム理化学研究所 光量子工学研究センター 画像情報処理研究チーム チームリーダー 横田 秀夫
関西大学 システム理工学部 機械工学科 教授 古城 直道
本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
機能と形状を組み合わせた観察を目指す
私たちは,3次元内部構造顕微鏡システムに,微小硬さ計測部を搭載することで,素材内部の微小硬さ分布を3次元的に可視化することに成功しました。ここで用いられているのはバーコビッチ圧子で,三角錐圧子と呼ばれているものです。ステージは圧電式のステージで,全体の3次元内部構造顕微鏡で位置決めをした後に,圧子による押し込み試験を行うためのシステムとなっています。ストロークとしては20 μmのものを選定し,分解能は1 nm,繰り返し精度も±1 nmとなっています。一方,微小力センサーは,圧子が押し込んだ際に受ける荷重を計測するために高分解能のものを選定し,0.1 mN,最大1 Nまでの計測が可能なセンサーとなっています。硬さ計測は,エッチング等は行わず,切削を行った平坦な面に対して行います。切削を行った後に硬さ計測を行い,その圧痕等が正常に生じているかどうかを確認するためにカメラによる撮影をします。このような工程を繰り返すことで原理的には3次元観測が可能になります。圧電ステージは制御コントローラーを介して電圧値をフィードバックすることができます。また,その値をPCに取り込むことで,より詳細な確認が可能になります。圧電ステージから接続された微小力センサー部分では,その電圧値を呼び込むことができ,AD/DAボードを介しPCまで力情報を取り組むことが可能となります。最終的な目標とするシステム構成としては,PCをベースとして目標荷重との偏差分の電圧値を圧電ステージに与え,その変位によって微小力センサーにどの程度荷重がかかるかをモニターし,そのモニターした荷重あるいはモニターしている変位をフィードバックしながら,目標荷重,目標変位を設定していくことになります。
3次元内部構造顕微鏡に搭載した例では,3次元内部構造顕微鏡の上であっても2次元的な押し込み試験が十分な精度で行えることがわかりました。これによって2次元硬さ分布を得ることができます。試料表面と内部の硬さが違う試料を使うと,表面では高い値を示し,内部では低い値を示すような3次元硬さ分布を得ることができます。今後の展望としては,硬さ計測とともにエッチング観察,組織観察を絡めることで硬さと組織の関係についても順次明らかにしていきたいと考えています。
なお,本研究の一部は,内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」によって実施されました。
理化学研究所 光量子工学研究センター 画像情報処理研究チーム チームリーダー 横田 秀夫
日本大学大学院農学研究科修了。神奈川科学技術アカデミー専任研究員を経て理化学研究所。博士(工学)。画像処理技術,生体・金属試料のディジタイジングに関する研究に従事。精密工学会,日本機械学会,日本生体医工学会各会員。関西大学 システム理工学部 機械工学科 教授 古城 直道
東京大学工学部精密機械工学科卒業。東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修了。博士(工学)。超精密加工に関する研究に従事。精密工学会,砥粒加工学会,日本機械学会,日本フルードパワーシステム学会,ニューダイヤモンドフォーラム各会員。