セミナーレポート

精密加工と精密位置決め技術の組み合わせによる材料内部の3次元組織観察,ならびに硬さ分布の3次元解析システム理化学研究所 光量子工学研究センター 画像情報処理研究チーム チームリーダー 横田 秀夫
関西大学 システム理工学部 機械工学科 教授 古城 直道

本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

>> OplusE 2021年1・2月号(第477号)記事掲載 <<


精密加工と精密位置決め技術を組み合わせ,素材内部の微小硬さを測定

 私たちは,物の表面ではなく,内部を含む3次元の情報を解析することに焦点を当て研究を進めています。現在,様々な材料の開発が進み,複合材料などにおいて,介在物や内部の欠陥などが大きな問題になっています。そのため,内部の3次元情報や機能の取得が重要になってきています。
 3次元の内部を観察する方法としては,「X線CT」による撮影が導入されています。しかし,X線CTはX線の透過率の分布を見る方法であり,透過率の違いがないものは不得手です。また,内部に存在しているクラックなど,細かな欠陥を見ることができません。これに対して微細なものを見る方法として開発されたのが「FIBSEM」です。これはガリウムイオンを集束させ,電子顕微鏡のチャンバー内でサンプルをイオンビームで照射し,その断面を観察するのを繰り返します。非常に精密に高分解能で観察することができます。ただし,工業製品のような広いエリアを見ることが難しいという欠点があります。内部を観察する技術では,対象物を切断し,断面に鏡面を出し,顕微鏡下にサンプルを持ってきて断面の画像を撮るという「切削除去加工による逐次断面観察」が一般に行われています。この方法は人が介在し,内部の特定の場所を見るのが難しいという面があります。そこで,私たちはこの方法をベースにして,自動化した精密切削・断面観察自動システムの開発を行いました。精密切削をすることで高い分解能で加工することができるとともに,光学顕微鏡を使うことで光の波長であるサブミクロン程度の観察が可能になります。位置も高精度で合わせることができます。
 これらを融合して開発したのが,試験片の切断と顕微鏡観察を繰り返す逐次断面切削観察法(シリアルセクショニング法)による「3次元内部構造顕微鏡システム」です。従来は切削と観察の工程の間に人が介在していたことから,位置を合わせることが難しいという課題がありましたが,位置決め精度をサブミクロンに抑えることにより,高精度な断層の画像を撮ることができます。

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理化学研究所 光量子工学研究センター 画像情報処理研究チーム チームリーダー 横田 秀夫

日本大学大学院農学研究科修了。神奈川科学技術アカデミー専任研究員を経て理化学研究所。博士(工学)。画像処理技術,生体・金属試料のディジタイジングに関する研究に従事。精密工学会,日本機械学会,日本生体医工学会各会員。

関西大学 システム理工学部 機械工学科 教授 古城 直道

東京大学工学部精密機械工学科卒業。東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修了。博士(工学)。超精密加工に関する研究に従事。精密工学会,砥粒加工学会,日本機械学会,日本フルードパワーシステム学会,ニューダイヤモンドフォーラム各会員。

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