セミナーレポート

精密加工と精密位置決め技術の組み合わせによる材料内部の3次元組織観察,ならびに硬さ分布の3次元解析システム理化学研究所 光量子工学研究センター 画像情報処理研究チーム チームリーダー 横田 秀夫
関西大学 システム理工学部 機械工学科 教授 古城 直道

本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

材料開発分野など3次元内部観察技術の展開

 私たちの方法は,実際に試料を切削して断面を出していますので,様々な観察技術と組み合わせることができます。例えば,位置的に空間の分解能がないような計測に対して,私たちの方法を組み合わせることで,3次元の空間分布を観察する技術に拡張できます。その1つが,3次元元素マッピングの拡張です。対象物の元素の特定だけでなく,どこに何の元素があるのかを可能にしました。アルミの筒の中に,銀と亜鉛と錫のワイヤーを三つ編みにしたものを作り,それを観察した結果,それぞれの元素がどこにあるのか3次元で見ることができるようになりました。
 計測技術の展開では,より硬い材料を観察したいという要望があります。特に工業製品では鉄系の材料の試料が多く,高品質な鉄の開発が求められています。鉄の中に含まれる不純物は材料の特性を左右することから,鉄系の3次元観察への拡張を行いました。
 さらに,私たちは,鉄の不純物を観察するだけでなく,材料開発において3次元内部観察に技術を展開していきたいと考えています。素材は産業の基盤であり,材料は日本の強みでもあります。材料の組織をコントロールすることによって材料自体の性能を大きく変えられることが近年わかってきました。2011年,アメリカでマテリアルゲノムイニシアティブが提唱されました。これは,コンピューターのシミュレーションによって材料設計を行うものです。日本でも内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)で革新的構造材料のプロジェクトが開始されています。日本は高品質な材料があるところに強みがあり,実際の材料を計測して,デジタルデータとシミュレーションをリンクさせることを目指しています。そのための材料組織の定量解析の部分で,私たちの研究を活用していきます。
 現在は装置を小型化し,企業でも使えるように市販化を目指した自動観測装置の開発を進めているところです。今後も様々な観察技術を組み込み,多様な3次元の観察を行っていきたいと考えています。

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理化学研究所 光量子工学研究センター 画像情報処理研究チーム チームリーダー 横田 秀夫

日本大学大学院農学研究科修了。神奈川科学技術アカデミー専任研究員を経て理化学研究所。博士(工学)。画像処理技術,生体・金属試料のディジタイジングに関する研究に従事。精密工学会,日本機械学会,日本生体医工学会各会員。

関西大学 システム理工学部 機械工学科 教授 古城 直道

東京大学工学部精密機械工学科卒業。東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修了。博士(工学)。超精密加工に関する研究に従事。精密工学会,砥粒加工学会,日本機械学会,日本フルードパワーシステム学会,ニューダイヤモンドフォーラム各会員。

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