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サッカーにおける巧みなパスの神髄は“目のつけどころ”にある東京成徳大学 夏原 隆之

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 サッカーの試合で発揮されるプレーの80%以上がパスだと言われている。それゆえ,パスはサッカーにおける最も基本的かつ重要なスキルであり,パスをする前に「いつ,どこに注意を払って見ているのか」は,プレーの成否を分ける重要な要素となってくる。
 競技者がどこを見ているのかを検討するための方法の1つに,眼球運動を計測する方法がある。私たちが用いた眼球運動計測装置(EMR-8b,nac社製)は,瞳孔中心位置と眼球に照射する近赤外LEDの反射した輝点(角膜反射像)の位置と角度から視線を検出しており,高い精度での計測が可能である(図1)。しかし,競技者に眼球運動計測装置を装着すれば,それで万事解決とはならない。いつ,どこを見ていたのかを科学的客観的に分析する際には,例えば,味方がボールを持っていた時,その味方が自分にパスをしボールが向かってくる時,自分がそのボールを受け取った時のそれぞれにおいて,パスを出したタイミング,向かってくるボールの速度や角度といった,他の環境条件も統制しておく必要があるが,サッカーのようなスポーツでは,直面する状況は一回性的な事象として競技者の眼前に立ち現れるため,その再現性を作り出すことが難しい。その反面,実際のプレー環境と近い状況下での計測が求められるため,生態学的妥当性の高い実験状況を構築する必要性がある。
 本研究グループは,高解像度カメラを用いて撮影したサッカー映像のライフサイズスクリーンへの投影,味方からのパスを想定したボール射出マシン,眼球運動計測装置および身体運動計測機器のすべてを同期させ,生態学的妥当性および再現性の高いシミュレーション環境を構築したことで,安定した実験環境下での精度の高い知覚運動スキル評価を可能にした1)(図2)。それにより,競技者は状況に応じて視線を向ける場所を変えていることを突き止めた(図3)。
 私たちはライフサイズスクリーンを用いたが,欧州ではsoccerbot360°という360度スクリーンが存在しているようである。今後は,こうしたスクリーンやVR技術等を応用して,TVゲームのようにVR上でプレーしている際の眼球運動を計測するなどの展開が考えられる。

参考文献
1)T. Natsuhara, T. Kato, M. Nakayama, T. Yoshida, R. Sasaki, T. Matsutake, T. Asai: “Decision-Making While Passing and Visual Search Strategy During Ball Receiving in Team Sport Play”, Perceptual and Motor Skills, Vol. 127, No. 2, pp. 468-489(2020)

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