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空と偏光東京工業大学 松谷 晃宏

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 『第4・光の鉛筆』に,空の色と偏光について書かれた項がある1)。それによると,「D. F. J. Arago(1809)は,空の光が強く偏光していて,太陽から90°の方位では,ほぼ完全な直線偏光になっていることを見いだしていました」とある。また,「大気の散乱による空の偏光が,球状空気分子のレーリー散乱のみによるとすれば,その偏光度は太陽から90°離れた方向で1となります。・・・実際の空が示す偏光特性は,定性的にはレーリー散乱と一致しますが,定量的にはかなり異なり,気象状況にも大きく左右されます」とも書かれている。
 それでは,空の偏光を観察してみよう。偏光の様子は,偏光フィルターを用意して太陽からおおよそ90°離れたあたりの空を見て,フィルターをくるくる回せば90°ごとに明るくなったり暗くなったりするのですぐにわかる。太陽から90°離れた方位というのは分度器を使って測っても良いのであるが,ここでは月に教えてもらうことにしよう。地球は太陽の周りを回っている。月は地球の周りを回っている。月は球形で,半月は明暗の境目が直線である。地球や月は太陽から遠いので,地球と月はほぼ同じように太陽からの光で照らされている。ということは,太陽と地球,月と地球を結ぶ線が直角に交わるときに半月が見えるわけである。つまり,太陽から90°離れた方向に半月が見えることになる。わが国ではこの月の見え方を半月,弦月,弓張月ともいう。太陽と月の黄経の差が90°のときを上弦,270°のときを下弦という。上弦や下弦は月が沈む時の明暗の境を弦とみて上か下かという説と,陰暦で上旬の弦月と下旬の弦月という説があるそうだ。つまり,上弦と下弦の月が出ている昼間の空を月といっしょに偏光フィルター越しに見てみれば,月を分度器として太陽から90°離れた方位の偏光の様子がわかるわけである。図1はこの方法で撮影した写真である。図1(a)は午後2時頃の上弦の月を中心とした空で,太陽は西(この写真では右側)に90°の位置にある。矢印で示したように左上から右下に暗い帯が見えており,偏光している様子がわかる。図1(b)は朝9時頃の下弦の月の空である。太陽は東(この写真では左側)に90°の位置にある。左下から右上に暗い帯が見えており,偏光している様子がわかる。太陽から90°の方位で空が偏光している様子を理解していただけよう。
 さて,Aragoは科学分野以外にも多方面で活躍した人物で,月のクレーターにも彼の名前が付いている。そのクレーターは静かの海にあって,図2のように上弦の月の頃の月齢で見やすく,Aragoにふさわしい位置にも思える。望遠鏡で覗いてみると改めてAragoに敬意を表したい気持ちになる。

参考文献
1)鶴田匡夫,「第4・光の鉛筆」,アドコム・メディア,pp. 1-15(2000)

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