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フルカラーを志向したエレクトロクロミック電子ペーパー千葉大学 大学院工学研究院 小林 範久

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 反射型ディスプレイで省エネ型電子書籍への展開が可能な電子ペーパーの概念が広まり始めた1990年中期以降から,候補技術として,現在主流であるマイクロカプセル化電気泳動方式以外にも多くの提案がなされた。エレクトロクロミズム(EC)は,電気化学酸化還元反応による物質の色調,色彩変化であり,CRT(Cathode Ray Tube:ブラウン管)に次ぐ薄型ディスプレイの候補として期待されたこともあったが,動画対応が不利なことから,その方向を調光窓や防眩素子に変更した歴史をもつ。しかしながら,電子ペーパー概念の出現により,動画対応でなくても高視認性,高可読性,低消費電力に重点が置かれると,その特徴が見直され,現在ではディスプレイのみならず,調光のもつpassive solar型省エネルギーの観点からも広くその展開が期待されている。
 ECは注目度の年代的変遷はあったが,2004年,繰り返し安定性に優れ,色域的にも満足できるCMY発色を有機系で実現,その積層化によるフルカラー表示の可能性を初めて示せた(図1)ことが,ECをフルカラー電子ペーパー展開に導く転機と思える。当時の電子ペーパーカラー化は,カラーフィルター(CF)が用いられていたが,反射率が低いためRGBに白を加えたRGBWでも,明るさや色に対して課題が多かった。実際,開発に携わった方から「マグロの赤身が中トロに見えるんだよ」など冗談まじりのお話を伺ったこともある。その点,ECはCFを使う必要がなく明るい表示が達成できるため,広く興味を示せたと思える。ECにおけるカラー化には減法混色系でのCMY素子の積層化が必要となるが,単一の素子から三原色を発現できれば素子構成を単純化できる。しかしながら,単一素子で複数色の発現には多段階の酸化または還元反応を行う必要があり,過度の酸化還元は物質の安定性の低下につながる。そこで,金属ナノ粒子のプラズモン吸収を活用し,銀の電解析出においてその粒径を制御することで,黒や鏡状態のみならずCMY三原色の可逆的発現を可能とするECを世界で初めて開発した(図2)。印加する電圧波形を変えるだけで,単一素子から複数の光学状態の発現が可能であり,高い繰り返し安定性を有する。鏡状態では60%以上の高反射率を簡単に発現できるため,単なるディスプレイ応用を超えた幅広い期待がもたれている。電解析出銀ナノ粒子のプラズモンを利用しているため,色純度的にはまだ課題はあるが,電解挙動をより精密に制御することで色純度改善の糸口も見え始めている。カーテンのエッセンスを含む高機能性窓など,広い意味でのディスプレイに発展できればと願い,チャレンジを続けている。

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